写真1●vRangerの画面
写真1●vRangerの画面
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 日本クエスト・ソフトウェアは2012年7月3日、VMware仮想サーバー環境向けデータバックアップソフトの新版「vRanger 5.5」(写真1)を発表した。8月1日に出荷する。新版では、重複排除の利用形態を拡充し、米EMCの重複排除バックアップNASストレージ「Data Domain」と連携できるようにした。Data Domainとの連携機能を提供するバックアップソフトは、米Symantec製品(NetBackupとBackup Exec)に次いで2社目となる。開発会社は米Quest Software。

 vRangerは、サーバー仮想化ソフトのVMware ESX/ESXi環境で利用するデータバックアップソフト。VMware仮想マシンのイメージをフル/差分/増分バックアップする。特徴は、バックアップすべきデータだけを抽出する工夫によって、バックアップデータ量を削減できること。バックアップ済みのデータや、他の仮想マシンと共通するデータをバックアップしない運用ができる。

 バックアップすべきデータだけを抽出する方法は二つ。一つはvRangerの独自機能であり、バックアップ対象のディスクイメージのうち実際に使われているデータブロックだけを抽出する機能である。もう一つはVMware vCenterが備える機能であり、仮想マシンのディスクイメージのうち更新ブロック情報を抽出する機能(Change Block Tracking)である。この二つを組み合わせて利用する。

 エージェントレスで動作する。vRangerサーバー(Windows Server 2003/2008で動作)とVMware製品群だけで、バックアップを実行できる。この上で、vRangerサーバーの配下に、vRanger VA(仮想アプライアンス)と呼ぶシステム構成要素を追加することも可能である。vRanger VAをバックアップ対象マシンの近くに配置するといった工夫により、バックアップデータをネットワークに流さずにバックアップすることができる。

ストレージの重複排除処理の一部をバックアップソフトにオフロード

 新版では、EMCの重複排除バックアップNASストレージであるData Domainと連携できるようにした。具体的には、Data Domainが用意しているエージェントソフト「DD Boost」を、vRangerに組み込めるようにした。これにより、Data Domainと組み合わせて利用する際に、Data Domainの重複排除プロセスの一部をvRanger側にオフロードできるようになった。

 従来版のvRangerでは、Data Domainにデータをバックアップする場合、重複排除前のデータをData Domainに転送し、Data Domain側で重複を排除する使い方しかできなかった。今回、Data DomainのエージェントをvRangerに組み込むことで、重複データをネットワークに転送する必要がなくなった。日本クエスト・ソフトウェアの社内検証では、Data Domainの重複排除効果によってバックアップ時間を最大で40%削減できたとしている。

 なお、Data DomainのエージェントソフトであるDD Boostは、データバックアップソフトがData Domainにバックアップするデータの重複を、データバックアップソフト側で排除できるようにするソフト。バックアップソフトに対しては、プラグインライブラリの形で組み込んで使う。現状、同プラグインを組み込めるようにしているバックアップソフトは、Symantecの2製品(NetBackup、Backup Exec)とvRangerの計3製品である。

 vRangerのライセンスはVMware ESX/ESXiのCPUソケット数だけに依存し、バックアップ対象となる仮想マシンの台数は問わない。CPUソケット当たりの価格(税別、以下同)は、機能をバックアップ/リストア機能に限定した下位版「Standard Edition」が9万8000円、レプリケーション機能を兼ね備えた上位版「Pro」が14万8000円。