写真●右から、米SAP Labsのマリオ・ハーガー シニア・イノベーション・ストラテジスト、米Salesforce.comのリーザ・モーシン バイスプレジデント/チーフサイエンティスト、シンクスマイルの新子明希代表取締役、モデレータを務めたループスコミュニケーションズの岡村健右ソーシャルメディアコンサルタント
写真●右から、米SAP Labsのマリオ・ハーガー シニア・イノベーション・ストラテジスト、米Salesforce.comのリーザ・モーシン バイスプレジデント/チーフサイエンティスト、シンクスマイルの新子明希代表取締役、モデレータを務めたループスコミュニケーションズの岡村健右ソーシャルメディアコンサルタント
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 「ゲームは仕事に効果あり」。登壇者らはこのような意見で一致した。2012年6月28日、東京・六本木で「ゲーミフィケーションカンファレンス2012」が開催された。セッションの一つが「ゲーミフィケーションで仕事を楽しくする方法」。社内で社員のモチベーション向上や活性化にゲーミフィケーションを応用する方法が議論された。登壇者は、米SAP Labsのマリオ・ハーガー シニア・イノベーション・ストラテジスト、Web関連企業であるシンクスマイルの新子明希代表取締役、米Salesforce.comのリーザ・モーシン バイスプレジデント/チーフサイエンティストである(写真)。SAP Labsは独SAPの研究組織。

 シンクスマイルは社員向けのゲーミフィケーションの仕組み「CIMOS(シーモス)」を運用している。何か良い成果を出したり、ほかの社員を支援したりした際に、社内システム上で「バッジ」を提供する仕組みである。「社員同士でほめ合う文化が形成された」と新子氏は語る。一定数のバッジが得られると「メダル」が獲得できる。

 社員にはメダルの数に応じて報酬が提供される。新子氏は「確かにお金は(ゲーミフィケーションの仕組みを利用する)一つの動機になっている」と話す。「だが、実際に社員の様子を見てみると、単純にほめたりほめられたりということが嬉しい、という感じで使っている」と続ける。

 CIMOSで過去の履歴を見ると、誰がどのような理由で自分にバッジを贈ったかが分かるようになっている。「この仕組みは、社員が自分の行動を振り返ったり、自分の個性を理解したりするのに、とても効果的。自分の個性が生かせるようになることで社員は楽しく成長できる」と新子氏は語る。

社内向けゲーミフィケーションはSNSとの親和性が高い

 「今、多くの企業がゲーミフィケーションを様々な分野に適用しようとしている。それは企業規模や業態の区別にかかわらず起きている動きだ」とSAP Labsのハーガー氏は語る。ハーガー氏はSAP社内および顧客企業に対して、ゲーミフィケーションのソリューション構築に携わっているという。「特に『社内の文化をどう変えるか』という観点からゲーミフィケーションを検討している企業が増えており、これは特徴的な動きの一つ」(ハーガー氏)。

 Salesforceのモーシン氏は、ゲーミフィケーションは、ソーシャルグラフを搭載したソーシャルネットワークの仕組みによって相乗効果が生まれると指摘する。先にCIMOSについて説明した新子氏の話を受けて、「ソーシャルネットワークを使えば、誰がいつ、自分の何の行動について『Like(いいね)』ボタンを押しているのかを可視化しやすくなる。これは、社員が自分の仕事の能力、あるいは仕事の成果の度合いを理解するのに役立つ。その意味では、社内向けのゲーミフィケーションはソーシャルネットワークとの親和性が高い」と指摘する。

 併せてリーザ氏は、「社内でゲーミフィケーションを成立させるには、ある程度の人数が必要。一定以上の社員に積極的に使われるように進めることが必要だ」と指摘する。「社内のコミュニケーションは、(意外な人が自分の仕事について『いいね』ボタンを押してくれたという)セレンディピティ(偶然の幸福な出会い)があるからこそ活性化する」(リーザ氏)からだ。