3枠に対して、NTTドコモとKDDI(沖縄セルラー電話含む)、イー・アクセスの3社が申請していた700MHz帯周波数の新規割り当て。3社の出願が判明した時点で3社への割り当てがほぼ確定的だったが、その一方で700MHz帯における3枠の位置、「Low」「Middle」「High」のどのバンドが各社に割り当てられるのかが次の争点となっていた(関連記事)。3社とも第1希望は電波干渉対策に有利な「Middle」バンド。審査基準に、より適合した上位者から順に、希望バンドを選ぶことになっていた。

写真1●電波監理審議会会長の前田忠昭氏
写真1●電波監理審議会会長の前田忠昭氏
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 2012年6月27日に開催された電波監理審議会は、NTTドコモが最も審査基準への適合度合いが高く、イー・アクセスとKDDIが同点で次点という審査結果を打ち出した(関連記事)。結果的に、最も適合度合いの高いNTTドコモに1番人気のMiddleバンド、次点のイー・アクセスに第2希望のHighバンド、KDDIにも同様に第2希望としていたLowバンドに割り当てることが適当と答申した。

 審査結果で差が出たのは、既存免許人のFPUと特定ラジオマイクの移行に伴う、終了促進措置計画だ。電波監理審議会会長の前田忠昭氏(写真1)は「NTTドコモの終了促進措置の計画は、テストベッドやフィールド試験環境の構築、認定開設者、免許人団体やメーカーも含めた協議会の設置を提案するなど、他社と比べていくつかの点で優れていると感じた」と、審査結果について説明する。

900MHz帯審査の傾向と対策を十分に練ったNTTドコモ

 今回の審査基準は、900MHz帯の時とまったく同様の基準であり、申請者が最低限満たすべき基準「絶対審査基準」と、複数者による争いになった際に競う基準「競願時審査基準」がある(関連記事)。差が出たのは、後者の競願時審査基準の第3基準である。第3基準は、(基準A)既存事業者の終了促進措置がより充実していること、(基準B)MVNO提供計画がより充実していること、(基準C)割り当てられている周波数帯の有無や差異、周波数幅に対する契約者数の程度という比較基準を設定。それぞれ3点満点で、合計9点満点の優劣を競った。

 差が出たのは(基準A)の終了促進措置計画であり、イー・アクセスとKDDIが合計1点のところ、NTTドコモはこの項目で3点となった。(基準B)と(基準C)は3社で差は出ず、合計得点はNTTドコモが5.5点、イー・アクセスとKDDIが3.5点という結果になった(表1)。

表1●700MHz帯、競願時審査基準(第3基準)の審査結果(合計9点満点)。赤い地色を記した項目が主な差が出た項目
表1●700MHz帯、競願時審査基準(第3基準)の審査結果(合計9点満点)。赤い地色を記した項目が主な差が出た項目

 ちなみに900MHz帯の申請時も、同じ第3基準で各社が優劣を競ったが(関連記事)、合計12点中、ソフトバンクモバイルが9点、イー・アクセスが8点、NTTドコモとKDDIが5点という結果だった(表2)。

表2●900MHz帯、競願時審査基準(第3基準)の審査結果(合計12点満点)。赤い地色を記した項目が主な差が出た項目
表2●900MHz帯、競願時審査基準(第3基準)の審査結果(合計12点満点)。赤い地色を記した項目が主な差が出た項目

 前回高評価だったイー・アクセスの得点が伸び悩み、逆にNTTドコモの得点が上昇したのは、「900MHz帯の申請を経て、各社が申請内容に大きな改善を加えており、900MHz帯の時と比べて各社の申請内容は充実していた。その中でもNTTドコモの申請内容が優れていた」(総務省移動通信課)という理由からだ。

 NTTドコモの申請内容を見ると、900MHz帯の申請時には、周波数移行のための社内体制は約70名と記していたのに対し、今回の700MHz帯の申請では最大530名と大幅に人員を強化している。さらには前述のようなテストベッドや協議会の設置を提案しているなど、前回の審査結果を経て、NTTドコモは審査の傾向と対策を十分に練ってきた様子がうかがえる。今回の700MHz帯の審査結果は、そんなNTTドコモの充実した“テスト対策”が実を結んだ形と言えそうだ。