V-Lowマルチメディア放送推進全国協議会は、2012年7月23日に「第1回V-Lowマルチメディア放送 シンポジウム」(場所は国立オリンピック記念青少年総合センター)を開催する。

 地上放送のデジタル移行により空いたVHF帯のうちLowバンド(第1~第3チャンネルの18MHz幅)を使うV-Lowマルチメディア放送は、mmbiによるNOTTVで実用化が始まっているV-High帯を使う全国向けマルチメディアと異なり、県域(+3大広域圏)をベースにした放送が展開される。デジタルラジオ(現行ラジオ放送のデジタル化)や、地域別に展開できるマルチメディア放送、さらには防災行政無線の補完と位置づけられる放送などが相乗りする形が想定されている。

 地上放送のアナログ放送が停波したあと、現在V-Lowの帯域は空いている。この空いた帯域を使って、七つの地域でV-Lowマルチメディア放送の実証実験を行う計画が、総務省に対して提出されている(総務省の発表資料1)。いずれの実証実験においても、防災や安心・安全の観点からの取り組みを含む形で実証実験が実施される計画になっている。

 V-Lowマルチメディア放送推進全国協議会は、こうした全国各地で行われるV-Lowマルチメディア放送の推進、実験などについて情報の共有、技術・制度などについての意見交換などを行う団体として活動している(ホームページ)。

 シンポジウムでは、V-Lowマルチメディア放送の制度、技術について、今後のV-Low世界の展望を踏まえ、新たな提案を行うほか、最新の実験の取り組みについて報告が行われる予定。

 特に防災面から見ると、V-Lowマルチメディア放送は、防災行政無線の補完と位置づけた検討が進んでいる。例えば、受信機を自動起動する機能を取り入れたり、音声のほかにテキストや画像などを取り入れた告知が可能になる。またバッテリーで長時間駆動できる端末が、FM東京との共同開発で山形カシオにより試作されている(山形カシオによる紹介ページ)。

 シンポジウムでは、V-Lowマルチメディア放送推進全国協議会で制度論を議論しているラジオビジョン分科会の主査を務める音好宏・上智大学教授氏と、技術分科会の主査を務める芝勝徳・神戸市外国語大学教授が基調講演を行う。

 さらに、実験準備が進む近畿・福岡、宮城の各協議会のプレゼンや、主要企業によるデモやプレゼンが予定されている。

 総務省は、昨年夏に行ったV-Lowマルチメディア放送のヒアリング結果の発表の中で、「今回のヒアリング結果や、ヒアリングで要望のあった実証実験なども踏まえ、V-Lowマルチメディア放送に係る制度整備を検討していく予定」としていた(総務省の発表資料2)。実証実験を行う団体が参加する全国協議会における議論をベースに行われる、制度・技術に関する講演内容は、今後のV-Lowマルチメディア放送の行方を探る上でも注目されるイベントになる。

 また、V-Lowマルチメディア放送では、自治体による直接広報も見据えて、放送波の使い方や制度・技術の議論が展開されており、シンポジウムにおける各分科会の報告や、各実験の報告、デモも見所になりそうだ。

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