図●NECが実施した電力消費予測実験のグラフ。上の従来技術による予測に比べて、下の「異種混合学習技術」による予測では実績と予測のずれが小さい(NECの資料より)
図●NECが実施した電力消費予測実験のグラフ。上の従来技術による予測に比べて、下の「異種混合学習技術」による予測では実績と予測のずれが小さい(NECの資料より)
[画像のクリックで拡大表示]

 NECの情報・ナレッジ研究所は2012年6月22日、ビッグデータの解析に役立つ「異種混合学習技術」を開発したと発表した。6月28日に英国で開催される「機械学習」分野の国際学会「The 29th International Conference on Machine Learning(ICML2012)」で詳細を報告する。2013年度の実用化を目指す方針だ。

 機械学習(Machine Learning)とは、コンピュータプログラムを使って大量のデータから有用な規則性、ルール、判断記述などを抽出する技術。製造・流通業などの需要予測や、スパムメールの判定、ネット広告の表示、デジタルカメラの顔認識、囲碁・将棋などのゲームといった分野に幅広く応用されている。

 機械学習には様々な手法があるが、「気温が上がればビルの電力需要は増えるはずだ」といった仮説を専門家が立てて、これを学習の手がかりにする手法が一般的だ。将棋などのゲームソフトでも、プロ棋士の差し手がプログラムに反映されている。

 ただし、例えばビルの電力需要を予測する場合なら、気温以外にも湿度、曜日、時間帯、出勤・来客者数、エレベーターなど大型機器の稼働状況など雑多な要因に左右される。センサー技術の発達で様々なデータを取得・蓄積できるようになったが、実際に電力需要を予測するには専門家が絶えず仮説を立てて検証し続けることが必要になる。これは実現困難なので、電力需要を抑えるためには出勤日をずらす、エレベーターを一部止める、といった単純な需要抑制策に行き着きがちだ。

ビルの電力需要予測の平均誤差率が大幅に縮小、2.7%に

 NECの開発した「異種混合学習技術」を使えば、センサーなどから収集された異種・雑多なビッグデータを基にコンピュータが自動的に仮説を立て、予測の精度を上るための規則性を見いだしやすくなる。

 NECが実施したあるビルの消費電力量の実績と予測を比較する実験では、従来の機械学習技術による予測では平均誤差率が10.3%と大幅なずれが生じた(グラフの上、緑の折れ線が実績、青が予測)。特に平日・休日のサイクルなどを正しく学習できないため、休日の需要予測でずれが大きい。一方で、新しい異種混合学習技術を適用した場合(グラフの下)の平均誤差率は2.7%で、曜日による需要変化も正確に予測できている。

 NEC情報・ナレッジ研究所は、「ビルの消費電力予測の精度が上がり、単なるピークカットではなくより効果的な節電対策が可能になる。医療分野なら身体活動のデータ蓄積から異常を発見して健康管理に役立てるなど、様々な分野に応用できる」と説明している。

 機械学習はビッグデータ解析を進めるうえで重要性を増している要素技術で、富士通なども研究開発を進めている(関連記事)。