総務省の無線LANビジネス研究会は2012年6月21日、第6回会合を開催した。今回の会合では、これまでの議論を踏まえて(関連記事1関連記事2関連記事3関連記事4)、報告書案を公開した。

 報告書案では、現状の無線LANの課題として、(1)携帯事業者の無線LANオフロードによって固定事業者が負担増加を迫られる問題、(2)2.4GHz帯における電波干渉、輻輳の問題、(3)情報セキュリティについて利用者への周知が不徹底の課題、(4)災害時における対応、(5)地域活性化、ビジネス活性化に向けた取り組みの課題、などを指摘。これらの課題に対する解決の方向性を示した。

 特にポイントとなるのは(1)~(3)の課題解決の方向性である。(1)の無線LANオフロードの課題については、研究会においてケイ・オプティコムなど固定系事業者から携帯事業者のオフロードトラフィックによって、固定系事業者が設備増強を迫られる可能性の指摘があった。報告書案では、まずは「オフロードトラフィックの実態についても把握することを検討していくことが適当」と記述。総務省は既にオフロードトラフィックの調査を始めており、その実態は次回の会合で一部報告するとした。

 (2)の2.4GHz帯の混雑の問題については、駅、空港、繁華街など人が多数集まる場所(パブリックスペース)においては、電波の輻輳等に配慮して、「できる限り共用型アクセスポイント(AP)を活用していくことが望ましいと考えられる」と踏み込んで記述した。これらについては、研究会終了後に、さまざまな事業者間で情報交換し、連携・協調できる場として自主的な連絡会、または協議会を設け、このような場を通して「具体的な取り組みを進めていくことが有益」とした。

 (3)の情報セキュリティについての利用者の周知については、公衆無線LANサービス事業者が、バックホール回線の構成、セキュリティの程度の違いなどを「できる限り利用者が知りうるよう努めていくことが望ましいと考えられる」と記述。また総務省においても、通信の秘密保護や個人情報保護等にかかわる法令など、公衆無線LANサービスの事業運営に際して留意すべき事項などを「ガイドラインとして定め、これを関係者に広く周知啓発を行なっていくことが有益と考えられる」とした。これまでは総務省が策定する「電気通信事業参入マニュアル」にも、公衆無線LANサービスについての具体的な記載は無かった。

 報告書案を受けた自由討議の中では、「iOSのアップテート時には、固定側でも10%ほどトラフィックが増える」(ケイ・オプティコム)、「大規模災害時に誰もがアクセスできるような、SSIDをあらかじめ定めておく方法もあるのではないか」(シスコ)、「混雑と干渉の問題は分けて考えるべき。共用型APにしたところで、APの処理能力を超える端末がアクセスしてきた場合は、結局つながらないケースもありえる」(バッファロー)といった意見が出た。

 報告書案は、まずは構成員、オブザーバーからの意見を募集。「広く意見募集にかけるかどうかは未定」(事務局)という。無線LANビジネス研究会は、次回の7月上旬の会合が最終会合になる。

総務省 無線LANビジネス研究会