NTTドコモは2012年6月19日、第21回定時株主総会を開催した。株主からは、iPhoneの取り扱いの有無をはじめ、契約純増数競争における苦戦、株価低迷などに対する厳しい質問が相次いだ。

 iPhoneの扱いについては、従来と同じく「現状では難しい」(関連記事)との回答にとどまった。「iPhoneは垂直統合モデルで、アップルがすべてをコントロールしている。日本の携帯電話で顧客の要望が多いのはおサイフケータイやワンセグ、赤外線で、iPhoneではそれができない」(山田隆持社長、総会後の取締役会で相談役に就任)。

 さらに、ドコモが力を入れるネットワーククラウドと、アップルのサービスが重複している点を理由に挙げた。「ドコモのしゃべってコンシェルと同等なサービスとしてアップルはSiriを提供しているが、端末はiPhoneに限られている。そこでは真ん中(ネットワーク部分)に付加価値がない」と主張した。

PlayStation Vitaにも回線提供しており戦略に矛盾との指摘も

 ドコモはネットワークの土管化を避けるため、端末の種類に関係なくネット経由で機能やサービスを提供するクラウド戦略に力を入れている(関連記事)。「(クラウド戦略を推進するには)スマートフォンのサービスを自由に作り込んでいいAndroidになる。かたやアップルはこうした作り込みを許してくれない。さらに(スマートフォンの販売台数の)半分以上を(iPhoneで)売ってくださいとなる可能性が高く、現状は難しい。ぜひご理解いただきたい。なんとしてもiPhoneを凌駕する端末とサービスを作っていきたい」(山田社長)と意欲を見せた。

 株主からはドコモが「PlayStation Vita」にも回線を提供しており、同じ土管化につながることなので矛盾が生じているとの指摘もあったが、「Vitaには導入義務(ノルマ)がない。アップルの場合、(2012年度のスマートフォンの販売目標である)1300万台の半分以上をiPhoneにしなさいと言われる可能性が高く、環境が変わっていろいろな端末を入れて構わないとなれば状況は変わるかもしれない」(同)との回答に終始した。

 携帯電話の月間純増数で3位が続いているとの指摘については、「2011年度のスマートフォンの年間販売台数は882万台。決して売り負けていない。今年度も昨日(18日)までで210万台を超えた。前年度の2倍以上のペース。MNP(番号ポータビリティ)のポートインも増えており、現場も元気。今後の動向を見ていただきたい」(山田社長)と巻き返しに自信を示した。

 KDDIの「auスマートバリュー」のような携帯と固定の融合サービスの提供については、「電気通信事業法で一定の規制を受けている。結果的に単純な値下げにならざるを得ず、その予定はない。2台目以降でXiのタブレットやルーターを使う場合に料金を割り引く『プラスXi』を展開しており、ご理解いただきたい」(加藤薫取締役常務執行役員、総会後の取締役会で社長に就任)とした。

 5月31日に上場以来の最安値を更新(終値ではなくザラ場で)するなど低迷する株価については「ご心配をおかけして申し訳ない。サービス総合企業への進化で成長につなげていくことを投資家の皆様にしっかりとお伝えしていきたい」(山田社長)とした。このほか、「ドコモはCMが弱い。他社は迫力があっておもしろい。犬に勝てない」との指摘もあった。これに対しては、「渡辺謙さんも常に犬に勝ちたいと言っていただいている。フジサンケイグループ広告大賞で最優秀賞もいただいており、評判も高い。頑張っていきたい」(同)と回答した。

「ドコモは使命と夢の会社」と加藤新社長

 株主総会は2時間6分で終了。剰余金の配当、取締役13人と監査役1人の選任の3つの議案はすべて可決された。相談役に退く山田社長は最後に、「在任期間中は現場が原点ということで全国460拠点を回らせていただき、顧客満足度1位を獲得できた。しゃべってコンシェルでネットワーク高度化も進め、震災の被害からも迅速に復旧できた。この場を借りて厚く御礼申し上げます」と挨拶した。

 社長に就任する加藤常務は「スピードとチャレンジの精神で全力を尽くす所存です」と挨拶。さらに「携帯電話の黎明期から足掛け30年にわたってモバイルビジネスに携わってきた。ドコモは使命と夢の会社。使命とは人と人をつなぐ通信、コミュニケーションを確保すること、夢はスマートフォンで人々の生活がより便利で充実したものにすることを指す。成長と顧客満足度の向上、企業価値の向上に努めて参りたい」と締めくくった。

 なおNTTドコモは同日、総会後の取締役会を経て、山田社長が相談役に、加藤常務が社長にそれぞれ就任する人事を発表した。