写真1●パイプドビッツ 社長CEOの佐谷宣昭氏
写真1●パイプドビッツ 社長CEOの佐谷宣昭氏
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写真2●日本IBM クラウド&スマーターシティー事業クラウド・マイスターの米持幸寿氏
写真2●日本IBM クラウド&スマーターシティー事業クラウド・マイスターの米持幸寿氏
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 クラウドコンピューティングの進展は、新しい社会イノベーションの実現につながる----。クラウドサービス事業者であるパイプドビッツの佐谷宣昭社長CEOと、日本IBM クラウド&スマーターシティー事業の米持幸寿クラウド・マイスターはこのような意見で一致した。「Interop Tokyo 2012」2日目である2012年6月14日に開かれた対談セッションで、2人は「オープンイノベーション」をキーワードに、クラウドの可能性について議論した。

 パイプドビッツの主力サービスは、クラウドアプリケーションを開発・運用するためのPaaS(Platform as a Service)である「SPIRAL」。クラウド基板上にデータベースやアプリケーション開発環境、またメール配信やアンケートなどのアプリケーションなどを用意している。SPIRALにはアイドルグループ「AKB48」の選抜総選挙用アプリケーションなど、大量のトラフィックが集中するアプリケーションの運用実績があるという。

 同社の子会社であるペーパレススタジオジャパンは、5月末に建築業界向けのクラウドサービス「「ArchiSymphony(アーキシンフォニー)」をリリースした。「BIM(Building Information Modeling)」と呼ばれる設計方式を可能にするサービスで、基盤となる仕組みにSPIRALを使っている。BIMは3次元の建築モデルや2次元の施工用図面、設備の仕様などを情報システムでまとめて管理することによって、建築プロジェクトの効率アップを狙うもの。佐谷氏によれば、米国では半分以上の設計プロジェクトがBIMを採用しているが、日本では1%程度と言われている。

 佐谷氏はBIMとクラウドベースの建築設計が普及することにより、建物のデータがさまざまな領域で活用されるようになると予測する。「例えば、街全体でどんな建築設備がどのように使われているかが把握しやすくなる」(佐谷氏)。建物のデータを地域コミュニティや自治体で共有するための仕組みやルールが必要となるが、「建物単体で見るのではなく街全体の観点から環境効率を高めるなど、これまで不可能だった大きなことができるようになる」と佐谷氏は展望する。

 一方で米IBMは「Smarter Planet」という構想を掲げている。これは、ICTで地域や地球規模での全体最適を目指そうというもの。IBMの米持氏は、佐谷氏の展望はSmarter Planetが目指す姿と同じであるとした上で、「データは共有によって新しいメリットが生まれる」とコメントした。

 米持氏によれば、Web2.0が話題になった頃に、Open Dataという考え方に注目が集まった。非公開だったデータを公開にすることによりWebアプリ上で処理できる内容の幅が広がり、ユーザーがより多彩なサービスを享受できるようになる、というのがその主旨である。「当時のOpen Dataは消費者向けサービスの分野で議論されたという色合いが強かったが、データをオープンにすることで新しいメリットが生まれるという構図は、企業や公共分野においても当てはまる」(米持氏)。

 米持氏はクラウドサービスやビッグデータの普及によって、Smarter Planetの実現に通じる動きが各所で増えてくるとみる。「データがオープンになることの価値は大きい。単なる一企業の最適化にはとどまらない、地域や社会全体が最適化できるような新しいイノベーションが期待できそうだ」と米持氏は語る。