写真●ITスキル研究フォーラムで講演するリコーの石野普之IT/S本部長
写真●ITスキル研究フォーラムで講演するリコーの石野普之IT/S本部長
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 ITエンジニアを対象としたスキル調査を実施しているITスキル研究フォーラム(iSRF、関連記事:IT技術者は保守的で変化に弱く、人月は22~107万)は2012年6月13日、東京都内のホテルでセミナーを開催、リコーで社内IT部門を統括する石野普之IT/S本部長が、「グローバルITガバナンスを推進できる人材」と題して講演した。

 石野氏は2009年10月から2010年度末まで実施した改革プロジェクト「COREsプロジェクト」(関連記事)を主導した。ITコスト(リコーが「事業継続型コスト」と定義するアプリケーションやインフラの保守・運用費)を30%削減するという目標を掲げたが、既に目標を達成し、2011年度実績では38.2%まで削減できている。

 石野氏がこうしたプロジェクトを進める時のよりどころとしているのは、自身の米国赴任時の経験だという。石野氏はIT部門ではなく研究開発部門に勤務していたが、39歳の時にいきなり米国赴任を命じられ、現地法人の情報システム構築プロジェクトを担当することになった。

 「それまで新婚旅行以外で日本を出たことがなかった。しかも英語は全くできず、TOEICスコアは300点台。好奇心だけが頼みだった」と振り返る。

「一言も話さないダメな奴」と言われ奮起

 赴任後に現地の社員や役員と会議しても、その場で話される内容は全く理解できず、黙って聞いているだけだったという。ただ3カ月ぐらいで耳が慣れた。「ある会議の席でいつものように黙っていたら、最後に現地法人役員が『今日の会議で、出席しているのに一言も話さなかったダメな奴がいる』と言い放ったのが耳に残った。これで気持ちにスイッチが入った」(石野氏)。その後、英語が下手でもとにかく発言することを自分に課し、徐々にリーダーシップを発揮できるようになったという。

 こうした経験を生かして、IT/S本部長という立場になった現在では、部下であるIT部門の人材を積極的に海外に派遣するようにしている。海外に派遣して「グローバルIT人材」として育成する人材を選抜する際の基準は、「3つのC」=「Communication(コミュニケーションへの意欲)、Curiosity(好奇心)、Challenge(挑戦、やる気)」である。石野氏は、「グローバルIT人材」として活躍するうえで語学力はあまり関係ないという見方を示した。

 「日本にいると、どうしても先輩や上司などの声に左右されて、やりたいようにプロジェクトを進めるのは難しい。海外に派遣すればヒエラルキーから自由になれるため、やる気さえあれば自分の責任で何でもやれる。その中で、失敗も含めた貴重な経験をしやすい」と石野氏は選抜基準の根拠を説明した。