日本公認会計士協会は2012年6月5日、「包括利益の表示に関する会計基準(案)」に対する意見書の内容を公表した。当面は連結財務諸表のみを適用対象とし、単体(個別)財務諸表には適用しないとした同案に対し、「今後は個別財務諸表への適用について議論することを要望する」とした。意見書は5月25日、会計基準の設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)に提出した。

 包括利益は、ある企業の特定期間における純資産の変動を表す利益概念(持分所有者との直接的な取引を除く)。IFRS(国際会計基準)と日本の会計基準(日本基準)との主要な差異をなくすコンバージェンス(収斂)の一環として、2011年3月期から連結財務諸表に表示を義務付けている。

 意見書の対象である「包括利益の表示に関する会計基準(案)」(企業会計基準公開草案第47号)は、現行基準(企業会計基準第25号)の改正案に当たる(関連記事:ASBJが「包括利益」基準の改正案公開、「単体には当面適用せず」 )。単体には当面適用しない旨を明示したのが特徴で、ASBJが4月24日に公表、5月25日までコメントを受け付けた。

 意見書では、「当面の間、個別財務諸表には適用しないこととしている本公開草案の取り扱いに関して反対するものではない」としながら、「包括利益の表示が実務に定着した段階において、再度、個別財務諸表への適用について議論することを要望する」という意見を述べている。その理由として、「連結財務諸表に適用される会計基準については、個別財務諸表にも適用することが原則と考えられる」ことを挙げている。

 加えて、「当面の間、個別財務諸表には適用しないこととする」という表現に関して、「当面の間、個別財務諸表には適用せず、任意に包括利益を表示することも認めないこととする」のほうが適当であるとしている。