写真1●IBM Storwize V7000の外観
写真1●IBM Storwize V7000の外観
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●日本IBM ストレージ・テクニカル・セールス、ソリューション担当部長システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐野正和氏
写真2●日本IBM ストレージ・テクニカル・セールス、ソリューション担当部長システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの佐野正和氏
[画像のクリックで拡大表示]

 日本IBMは2012年6月5日、ミッドレンジ級の多機能型SANストレージ「IBM Storwize V7000」(V7000、写真1)とストレージ仮想化装置「IBM SAN Volume Controller」(SVC)の2製品について、ブロックデータのリアルタイム圧縮機能を追加したことを発表した。データ圧縮機能はオプション扱いで、6月15日に提供開始する。価格(税別)は、V7000向けが1台当たり135万円、SVC向けが1Tバイト当たり30万4800円から。45日間無償で使える試用ライセンスも用意した。

 今回、V7000用ソフトウエアの新版「IBM Storwize V7000 Software V6.4」と、SVC用ソフトウエアの新版「IBM SAN Volume Controller Software V6.4」を出荷する。新版における目玉機能が、新たにオプションとして用意したリアルタイム圧縮機能である。日本IBMによれば、ファイルデータではなくSANストレージのブロックデータを対象にリアルタイム圧縮する製品は、市場では珍しいという。

対象製品は、ストレージ仮想化と自動階層化が特徴

 V7000とSVCに共通する機能は、ストレージ仮想化と、自動階層化である。ストレージ仮想化とは、複数のSANストレージを束ねて仮想的なストレージプールを構成し、複数ストレージにまたがったボリュームを作成/運用できる機能である。今回新たに追加したリアルタイム圧縮機能は、仮想化したストレージボリュームに対しても有効である。

 一方、自動階層化は、細かいデータ単位(最小で16Mバイト)で自動的に階層型ストレージ管理(ILM)を実現する機能である。データのアクセス頻度に応じて、SSDやHDDなど性能が異なる複数種類のストレージへと自動的にデータを移動する。同機能は、ハイエンドストレージ「IBM System Storage DS8700」が以前から提供している「Easy Tier」機能に準じる。

要素部品の進化は鈍化、設計デザインが重要に

 今回、V7000とSVCにリアルタイム圧縮機能を追加したことは、日本IBMが掲げる、ストレージを効率的に動作させることによってコストを削減するビジョン「スマーター・ストレージ」を実現するための、具体的な製品実装の一例であるとしている。今後、ストレージ仮想化や自動階層化の機能を中心に、より低価格な製品を、より広範囲な用途に使えるようにしていくという。

 例えば、今後の開発予定の一例として、V7000をベースとしたミッドレンジ級のSAN/NAS統合ストレージを、分散ファイルシステムを採用した比較的高価なクラスター型NAS製品「IBM Scale Out Network Attached Storage」(SONAS)と連携できるようにする。SONASとV7000が混在した環境で、単一のNASボリュームを運用できるようにする。これにより、遠隔拠点にまたがった分散NASなどを、以前よりも安価に導入できるようになる。

 同社がストレージを効率的に動作させることに意欲的である背景には、ストレージを構成する要素部品の進化が鈍化している、という状況がある。「同じ部品を使っていても、デザイン(設計)次第で、ストレージの容量と速度の効率に違いが出る」(日本IBMの佐野正和氏、写真2)。「価格当たりの容量は、2000年代は年率で2倍に増えていたが、2010年代は年率20~40%程度に鈍化した。さらに、ドライブ当たりの性能は頭打ちになっている。こうした中で、データ量だけが増えている」(佐野氏)。