米Amazon.comと独立系出版社の業界団体、米Independent Publishers Group(IPG)による電子書籍の卸売り契約に関する紛争が解決し、Amazonが加盟出版社の電子書籍販売を再開した。これにより、約500社の5000タイトルに及ぶ出版物の電子版が順次Amazonの電子書籍配信サービス「Kindle Store」で販売されることになる。現地時間2012年5月25日に複数の海外メディアが報じた。

 この問題は2012年2月、AmazonとIPGが卸売り契約を更新する際に起こった。米Wall Street Journalによると、Amazonが求めた新たな契約条項が加盟出版社の収益と作者に支払われる印税に大きな影響を及ぼすことから、IPG側はより出版業界の慣習に近い条件を提案した。しかしこれがAmazonの条件と合致せず、同社はその直後に加盟出版社の電子書籍をKindle Storeから削除した。

 両者は今回和解に至った経緯や、取引条件などは明らかにしていないが、Wall Street Journalは出版契約には通常、卸売価格、宣伝、支払い条件といった条項が含まれていると伝えており、両者がこれらの取り決めをめぐって譲歩したもようだ。また業界誌の米Publishers Lunchも、Amazonが4月に書籍のマーケティングに力を入れることを条件に4%の値引きと求めたと伝えている。

 技術系ニュースサイトの米The Vergeは、米国の電子書籍市場におけるAmazonの影響力は強く、その市場支配力には米国の作家団体Authors Guildなども懸念を示していると報じている。なお4月には、Amazonの値引き販売に不満を抱いていた出版大手5社と米Appleが共謀して電子書籍の価格をつり上げた疑いがあるとし、米司法省(DOJ)がニューヨーク南地区の連邦地方裁判所に提訴している。このうち3社は司法省と和解している(関連記事:米司法省、電子書籍の価格カルテルでAppleと出版大手を提訴)。