エリクソン・ジャパンは2012年5月23日、総務省の「IPネットワーク設備委員会 安全・信頼性検討作業班」の第19回会合で、スマートフォンのトラフィック対策の動向について説明した。急増するトラフィックや制御信号に対し、端末やネットワークの最適化を進めることで対応可能との見通しを示した。

 エリクソンによると、スマートフォンのトラフィックは年間2倍前後のペースで伸びているという。従来型携帯電話を基準に端末の種類で分析すると、スマートフォンは10倍、タブレット型端末は40倍、パソコンは100倍のトラフィックになる。制御信号は無線ネットワーク側でスマートフォンが3倍、パソコンが9倍、コアネットワーク側でスマートフォンが2倍、パソコンが2倍との結果が出ている。その上で、トラフィックや制御信号はパソコンが圧倒的に多いが、スマートフォンは台数が多い上に使用頻度が高く、制御信号増加による設備への影響が大きいとした。

 エリクソンはこうした事態を受け、スウェーデンとサンノゼ、香港に「スマートフォン・ラボ」を設置し、端末メーカーやチップセットメーカーなどと協力して市場投入前の端末を検証しているという。YouTubeを閲覧するだけでも端末ごとの挙動は大きく異なり、一気にダウンロードして待機状態に入る端末があれば、無線通信と待機を頻繁に繰り返す端末もある。そこで各種動作に応じた状態遷移を検証し、制御信号を抑えるチューニングを施しているという。

 制御信号を減らす手法としては、(1)TCPのデータ転送速度を制限しない、(2)接続を最大限共有化して切断処理を最適化する、(3)アプリ内およびアプリ間の無線通信の挙動を調整する、(4)各種アプリによるポーリングを避けてOSベースのプッシュ配信にする、(5)キャッシュを広く活用する、(6)無線通信の挙動をクロックと同期させないようにする---を挙げた。これらはAndroidの開発者向けガイドラインに反映されているという。

 このほか、3GPP Rel.8で規定された「Fast Dormancy」(高速休止)を用いた制御信号抑制の取り組みも紹介した。スマートフォンの無線通信状態の遷移の仕方を見直し、通信しない「IDLE」状態を大幅に減らすことで制御信号を抑制する。最新のAndroidとiOSでは既に対応しており、通信事業者(携帯電話網)側の対応も今後進む見通しだ。対策動向を説明したエリクソン・ジャパンの藤岡雅宣CTOは「トラフィック増加よりも制御信号増加の方が深刻な問題。Always-On型アプリが広がっており、タイマー設定や制御信号の扱いを最適化する対策が今後も不可欠」とした。