写真1●基調講演に登壇した全日空システム企画の鈴木敦之氏(国内旅客システム部 第二チーム アシスタントマネージャー)
写真1●基調講演に登壇した全日空システム企画の鈴木敦之氏(国内旅客システム部 第二チーム アシスタントマネージャー)
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写真2●Enterprise TEST Forum 2012の会場
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 「性能や信頼性の要求が極めて高いプロジェクトを、システムテストの工夫で乗り切った」――。2012年5月22日、日経SYSTEMSが都内で開催した「Enterprise TEST Forum(ETF) 2012」。基調講演に登壇した全日空システム企画の鈴木敦之氏(国内旅客システム部 第二チーム アシスタントマネージャー)はこのように述べ、全日本空輸(ANA)の国内線予約Webシステム「ANA SKY WEB」のテストに注力したことを強調。その上で「あらゆる場面でテストツールが活躍した」と語った(写真1)。

 ETFは、業務システム開発向けのテストツールに特化したセミナー型のイベント(写真2)。2011年の「ETF 2011」(関連記事)に続く2回目の開催で、約350人の受講者が参加した。今回のテーマは「あなたのプロジェクトを救うテストツール~工数削減と品質向上を両立させる~」。全部で五つのセッションが行われた。

 その冒頭で、ANA SKY WEBの開発を手掛けた鈴木氏は、テストでの奮闘ぶりを明かした。「17カ月に及ぶプロジェクトでシステムテストを2回実施するなど、テストに多くの時間を割いた。工数を捻出するために24時間体制によるテストも実施した」(鈴木氏)。

 具体的な工夫については、テストによる不具合の種類を18通り、その原因を20通りに分けて細かく管理する障害管理票を作成したことを紹介。また、ときには設計に立ち返って再テストを実施することもあり、単体/結合/負荷テストを支援するツールをシステムテスト内で効果的に活用したことを説明した。

主要3社がテストツールの特徴を紹介

 鈴木氏の講演に続いて、日本マイクロソフト、日本IBM、マイクロフォーカスの3社が、テストプロセスの重要性や、自社のテストツールの特徴をアピールした。

 まず日本マイクロソフトの長沢智治氏(デベロッパー&プラットフォーム統括本部 エバンジェリスト)は、「プロアクティブな品質を駆動する開発環境とは - Visual Studio ALM による革新的な品質の作り込み」と題して講演。システムを短い期間で段階的にリリースしていくアジャイル型への転換が急務だとした上で、「プログラムの継続的なインテグレーション、それに伴うテストの効率化が重要だ」と訴えた。Visual Studioには、プログラムを修正すると、関連するすべてのプログラムを自動でテストする機能があることも説明。また、テストの進捗や合否判定の管理を自動で行う機能なども紹介した。

 続く日本IBMの細川宣啓氏(ソフトウェア事業 Rational事業部 ワールド・ワイド・タイガーチーム)の講演タイトルは「コスト削減と品質向上のバランスを重視した、IBMのテスト管理戦略と未来の品質開発基盤」。複雑化・ビッグバンテスト・外注品質管理という三つのトピックについて、自社製品の機能を交えて紹介した。テストを自動化するメリットについては「システムをデリバリーするまでの時間を短縮できるだけでなく、人的ミスを削減できる」とした。

 マイクロフォーカスの山岡英明氏(営業部 ディレクター)は、「ソフトウエアテストにおける課題を克服する『テスト戦略』の組み立て方」というテーマで講演。ソフトウエアテストの課題を「テストの専門部隊が存在しないこと」と指摘した上で、「不具合修正コストが最も低い単体テストにおいて、静的解析や動的解析で不具合を早期発見することがポイント」と解決策を示した。そして、テストプロセスの改善やテストツールの導入によって成果を上げた企業の事例を紹介した。

 締めくくりは、日経SYSTEMS編集部の森重和春副編集長による「テストツール、知られざる便利機能~計画と設計の負担は軽減できる~」。森重副編集長はテストツールの利用率の低さを指摘した上で、「テストに関する現場の負担と、ツールの機能にギャップがある」と分析。「特にテストの設計とテストの準備の負担が大きい。実はこれを支援する便利な機能はいくつもある」(森重副編集長)と語った。そして、具体的に「本番環境からテストケースをリバースする機能」「テスト環境を仮想環境上に用意する機能」「英文でテストスクリプトを作成する機能」といった八つの便利機能を紹介した。