写真1●アジア・アントレプレナーシップ・アワード2012の決勝プレゼン
写真1●アジア・アントレプレナーシップ・アワード2012の決勝プレゼン
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写真2●決勝プレゼンで勝ち残った3チームの面々(クリアブリッジ・バイオメディクス、ニュージェント・テクノロジーズ、ワークロハス・テクノロジー)
写真2●決勝プレゼンで勝ち残った3チームの面々(クリアブリッジ・バイオメディクス、ニュージェント・テクノロジーズ、ワークロハス・テクノロジー)
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 アジアの起業家が日本に集まり、世界を変えるビジネスを競う――。こんなユニークなビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2012」(AEA2012)が、2012年5月9日~11日の3日間、千葉県の柏の葉キャンパスで行われた(AEAのホームページ写真1)。

 AEA2012のノミネーション委員会委員長を務める各務茂夫氏(東京大学教授/同大学産学連携本部 事業化推進部長)は、開催の背景について「日本のベンチャーを取り巻く環境を、もっと開かれたものにしたい。国内外の企業が相互に刺激し合って、アジア全体の発展になるといいと考えている」という。海外の企業にとっては日本が顧客や投資元となり、日本の企業にとっても海外市場や企業の学びの場になってほしいというのだ。

 3日間のイベントでは、東京大学・前総長の小宮山宏氏や駐日米国大使のジョン・V・ルース氏、キッコーマン名誉会長の茂木友三郎氏の講演を聞き、柏の葉キャンパス近辺の大学・企業を見学するなどして交流を深めた。

 5月11日に行われたプレゼンテーションには17組が参加、3グループの予選会から勝ち上がった6チームによる決勝プレゼンの結果、シンガポールのクリアブリッジ・バイオメディクスが第1位を獲得。優勝賞金の300万円と東葛テクノプラザ(インキュベーション施設)3年間無料入居権、副賞のノートパソコン2台を手にした。第2位にはフィリピンのニュージェント・テクノロジーズが、第3位には台湾のワークロハス・テクノロジーが選ばれた(写真2)。

 クリアブリッジはシンガポール国立大学から派生した企業で、マイクロフルイディクス技術によるがん診断装置を開発している。ニュージェントは、フィリピンの低所得者層向けの低価格ネット端末「TELPAD」を既に製品化しており、現在はその後継版、拡張版の開発に取り組んでいる。ワークロハスが開発するのは、「Justable」と呼ぶWebページの保存サービス。お気に入りのページを画像データと共に保存して一覧できるようにした。

 このほか、千葉県知事賞としてフレクソリサーチ・グループが、日本企業最高位賞としてクオリティエクスペリエンスデザインが選ばれた。フレクソリサーチは東葛テクノプラザの3年間無料入居権を獲得、クオリティエクスペリエンスデザインには、インテルが主催するコンテスト「Intel-DST Asia Pacific Challenge」への出場権が与えられた。

 今回登場したスタートアップ企業はジャンルやビジネスのステージが異なるだけに、比較や審査が難しそうにみえる。この点について各務氏は「今回のコンテストは、プランを競うものではなくビジネスを競うもの。明確なビジネスモデルとお客さんが誰かという点を重視した」という。大学発のベンチャー企業が中心だっただけに「技術の論理からビジネスの論理に変えることは、大きなチャレンジ」だったようだ。

 ただ、今後はビジネス重視一辺倒にはならない可能性もあるという。「新ビジネスには、売り上げに結びつかなくてもソーシャルインパクトが大きいものがある。数年経った時には、分けて考えないといけないかもしれない」とする。

 日本からも5社が参加したが、残念ながら決勝進出企業はなかった。各務氏は「いい事業だと思ったら、登竜門だと考えて次回には参加してもらいたい。英語でプレゼンし、海外の投資家にも魅力的と思われるものを作ってもらいたい」と期待を語る。2013年の同時期に、第2回の開催予定という。

 なお、今回参加した企業名と事業概要は以下の通り(社名アルファベット順。このうち、エコリブリアムはメンバーの体調不良により棄権)。

エー・イー・テック(日本)
LED照明向けの、高品質で低価格のLEDチップの開発。現行の半額以下でのLED生産を目指す

アグロ・サイエンス・リソース(マレーシア)
揚物食品の油の吸収を削減、油脂の酸化を遅らせる添加物「Add-X」を開発。肥満防止や廃棄食用油の削減につながるという

北京3Hipsテクノロジーズ(中国)
エネルギー産業やサービス産業向けの情報プラットフォームを提供

クリアブリッジ・バイオメディクス(シンガポール)
シンガポール国立大学生物工学部のリム・チュイー・テック氏のマイクロフルイディクス技術によるがん診断装置を開発

エコリブリアム・エネルギー(インド)
エネルギー消費の最適化支援のためのモニタリング・ソリューションを提供

フレクソリサーチ・グループ(タイ)
紙と樹脂の層を分離する混合酵素を開発。ラミネート紙のリサイクルを可能にする

ラーンエバー(日本)
趣味・習い事や仕事に役立つスキルなど、個人が自由にクラスを作成し、教えたり、学んだりできるソーシャル教育プラットフォーム

メッシュラブズ・ソフトウエア(インド)
テキストデータからビジネスインサイトを抽出し、経営の意思決定者に必要な知見を提供する

ニュージェント・テクノロジーズ(フィリピン)
低所得者層向けの低価格ネット端末「TELPAD」を製品化、現在はその後継版、拡張版の開発に取り組んでいる

ノートメイト(中国)
教室内の双方向、生徒間コミュニケーションのためのソーシャルメディア

ナウプロファイル(韓国)
不用品を処分・再利用するためのモバイル・アプリケーション「Gazee」を開発

PSPセキュリティ(香港)
顔認識技術を用いたセキュリティシステム。低価格化により、幅広い市場への拡大を目指す

クオリティエクスペリエンスデザイン(日本)
3次元(3D)画像を制作する製品およびコンサルティングサービスを提供

リーボ(日本)
1人または2人乗りの小型電気自動車をレンタルする新しい交通インフラ「こでかけ」を提供

スマートソーラーインターナショナル(日本)
ブーストアップコンバーターや冷却技術、環境適合素材の多層構造太陽電池などにより、安価な電力を提供するスマートソーラーシステムを提供

テレハウス・インターナショナル・ベトナム(ベトナム)
KDDIと現地企業の合弁により、グローバルブランド「TELEHOUSE」のデータセンター事業を提供

ビブラシンド(インドネシア)
事故・災害の早期警告システムの開発により、人命の損失防止を目指す

ワークロハス・テクノロジー(台湾)
お気に入りのページを画像データと共に保存して一覧できる「Justable」を提供