米ヒューレットパッカード(以下HP)は2012年5月9日と10日の2日間、中国・上海において「2012 HP Global Influencer Summit」を開催した。10日午後に行われた閉会の講演で、同社が将来に向けて進めている基礎研究の内容について紹介。パソコンやプリンターの事業ついても目指す方向性を示した。

 HPの基礎研究の内容を紹介したのは同社のモバイル&インプレッシブ・エクスペリエンス・ラボのディレクター、ジョン・アポストロポロス氏(図1)。同氏は未来のコンピューティングを生み出す将来の技術として、データ保存のための新しい電子回路、折り曲げ可能なディスプレイ、クラウドの利用による軽量な個人向け電子端末、現実世界とデジタルの融合の4つを挙げた(図2)。

図1 モバイル&インプレッシブ・エクスペリエンス・ラボ、ディレクターのジョン・アポストロポロス氏
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図2 未来のコンピューティングを生み出す将来の4つの技術が紹介された
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 1つ目はHPが「Memristor(メモリストア)」と呼ぶ電子回路の技術(図3)。容量の拡大が容易で、低消費電力で低コストな、データ保存のための電子回路を目指している。「フラッシュメモリー、DRAM、ハードディスクなどを置き換える可能性がある」(アポストロポロス氏)という。

 2つ目の折り曲げ可能なディスプレイはプラスチックを素材とする。軽くて薄くて壊れにくく、ロール状のフィルムに印刷するような工程で大画面を低価格で実現するという。応用例としてより薄くて軽いモバイル機器、壁一面に表示するような大画面ディスプレイ、身に付けられるフィルム状の表示機器などが考えられる(図4)。

図3 「Memristor(メモリストア)」はHPが開発中のフラッシュメモリー、DRAM、ハードディスクなどを置き換える電子回路技術
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図4 折り曲げ可能なディスプレイの応用例。左より、薄くて軽いモバイル機器、大画面ディスプレイ、身に付けられる表示機器
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 3つ目と4つ目の技術は、実用例のイメージとして、遠隔地に住む生徒が、教師から受け取った課題を学習する様子が紹介された。生徒が使う端末は、クラウドからコンテンツを受け取るだけでよいため、紙のように薄い(図5)。屋外で端末をかざし、現実とデジタルが融合した画面の中で自分で考えた橋の強度を確かめる過程が示された(図6)。

図5 クラウドを利用した教育用端末のイメージ。画面は上海に住む生徒に、ニューヨークの教師から、橋の仕組みを考える課題が届いた様子
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図6 端末を実際の川にかざし、自分で考えた橋の強度を確かめている様子。端末を揺すると、出来の悪い橋は崩れてしまう
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