「内外との激動の6年間だった」。2012年6月の退任を控えてパナソニックの大坪文雄社長は5月11日、大阪府枚方市で会見し、社長在任期間をこう総括した。

 さらに「リーマンショック以降、経営環境が変わってしまった」と話し、変化に素早く対応できなかった悔しさをにじませた。2012年3月期に過去最大となる7700億円超の純損失を計上したことについては「大きな責任を感じている」とした。

 一方で、三洋電機やパナソニック電工の完全子会社化など「次なる成長に向けて手を打ってきた」とも述べた。大坪社長は足繁く各地を回ることで、今後は白物がグローバルで大きく伸びる可能性を感じたという。

 赤字のテレビ事業については、大規模な設備投資を実施したことが「結果として過剰投資になった」と振り返った。数年内に投入を目指す有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビでは過去の過剰投資への反省から「すべて自前で設備投資をする可能性は極めて低い」と語った。

 2013年3月期のテレビの販売台数は前期(2012年3月期)から100万台ほど減り、1250万台程度を見込む。売上高は約1割減って6000億円ほどになりそうだ。単価が15%下落するという予測を織り込んだうえで、構造改革効果の刈り取りやパネルの非テレビ用途の開拓などで「収支トントンが見える」とした。

 質疑応答では、2018年に「エレクトロニクス・ナンバー1の『環境革新企業』」となる目標の進捗を問われ、大坪社長は「2~3合目付近」と述べた。今後は業績のV字回復と先の目標の達成に向けて「会長として(津賀一宏)社長のリーダーシップを補佐したい」と力を込めた。

 パナソニックの2012年3月期の連結業績は、売上高が前年度比9.7%減の7兆8462億1600万円、営業利益が同85.7%減の437億2500万円だった。