写真●2012年3月期の連結決算を説明するNTT持ち株の三浦惺社長
写真●2012年3月期の連結決算を説明するNTT持ち株の三浦惺社長
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 NTT(持ち株会社)は2012年5月11日、2012年3月期の連結決算を発表した。売上高は対前年度比2.0%増の10兆5073億円、営業利益は同0.7%増の1兆2229億円だった。業績予想は若干下回ったが、増収増益は2期連続。海外売上高が116億米ドルと大幅に拡大したほか、スマートフォンの拡販で移動通信事業の収入が伸びていることが増収に貢献した。

 三浦惺社長は決算会見で、2008年5月に打ち出した2012年度(2013年3月期)までの中期経営戦略「サービス創造グループを目指して」が達成に向けて着実に進捗していることをアピールした。レガシー系中心からIP系/ソリューションなどの新分野へ軸足を移し、連結売上高の75%とする事業構造改革は2011年度で70%まで拡大。光収支の単年度黒字化も、確定は6月の予定だが、達成できる見込みとした。海外売上高100億米ドルの目標は1年前倒しで達成した。

 今後は個人向けの(1)アプリケーション/コンテンツ、企業向けの(2)ビッグデータとM2M、(3)データセンター/クラウドの3分野に重点を置いて成長を目指す。3分野合計の売り上げ規模は2012年3月期で約6800億円だが、13年3月期までに3割増の約8600億円に拡大させる目標を掲げた。

 2013年3月期の通期予想は売上高が前年度(2012年3月期)比2.3%増の10兆7500億円、営業利益が同4.7%増の1兆2800億円と、3期連続の増収増益とした。

今秋から「フレッツ光ライト」をマンション向けにも提供

 NTT東西地域会社が提供する「フレッツ光」の純増数は約150万件。KDDIをはじめとした他社との競争が激化していることに加え、モバイルブロードバンドで十分とするユーザーも増えている。純増の鈍化が続くが、「ADSLから光への切り替えを含め、光の需要はまだまだあると考えている。今後も販売努力を続けて解約防止を図り、純増数を確保していきたい」(三浦社長)とした。12年度は145万件の純増を見込む。

 NTT東日本の江部努社長はKDDI(au)が携帯と固定をセットにした割引サービスで攻勢に出ている点について「(KDDIが光の提供を)拡大した地域とそうでない地域を比べると明らかに(KDDIが提供を拡大した地域は)解約率が上がっている。ただ減っているのはマンション向け。戸建て向けの解約率は横ばいを維持している。KDDIのエリア拡大で当初は減るかもしれないが、3月に始めた『にねん割』(関連記事)で対抗できると考えている」とした。

 にねん割の出だしは好調。「2012年度末までに全体の20%程度の加入を想定していたが、既に90万件を超えた。2012年度末の想定も20%から50%に引き上げた」(江部社長)。減収の影響も150億円まで拡大するが、6月から新規顧客向けのキャンペーン内容を変えて影響を抑える計画だ。具体的にはフレッツ光の工事費無料をやめ、2年間継続利用すれば工事費が実質無料となる仕組みに変更する。工事費は一括払いか24回払いかを選べ、毎月の通信料金を2年間、1000円割り引く。

 今秋からは2段階定額制の「フレッツ光ライト」にマンション向けを追加する。毎月の通信量が少なければ「月額2000円台の下限」で済む料金に設定し、ライトユーザーの取り込みを強化する考えだ。