これまで日本で比較的情報が少なかった「ユーザーストーリー」という要件定義手法の普及に永和システムマネジメントが乗り出した。2012年5月22日、同手法のノウハウを学ぶセミナーを初めて開催する。一般企業の情報システム部門が主な対象。

 同社によれば、ユーザーストーリー手法について海外では『User Stories Applied』などの解説書が発刊されているが、国内では情報が少ない。要件定義のフェーズで起こりがちな「要求が本当に妥当か分からない」、あるいはアジャイル開発を進める途中での「予算に合わせて柔軟にスコープを変更したい」といった課題の解決にも役立つという。

 具体的には、「現在の業務フローを書き出す」「関係者が要求を提示する」「要求事項を業務フローにマッピングしながら、あるべきフローを作る」「あるべきフローから、利用シーンを抽出する」「利用シーンごとにストーリーを洗い出す」「ストーリーの優先度を決める」「開発スコープを決める」という手順で、検討を進める。

 同社サービスプロバイディング事業部アジャイルグループの市谷聡啓主任によると、ここでいうストーリーの良い例は「経理担当者として月ごとに売り上げを集計したい」で、悪い例は「販売管理パッケージを使って売り上げを5割伸ばしたい」「Rubyで開発したい」などだ。

 良いストーリーの基準は、「(要求として)独立していること」「交渉可能であること」「価値がある」「見積もり可能(要求完了の定義が明確)」「要求範囲が小さい(アジャイル開発に適する)」「テスト可能であること」だという。

 同社で2011年後半から何度か同手法を社内で実験的に使ってみたところ、「『エンドユーザーと開発者の合意形成がスムーズになる』『比較的短時間で漏れなく要求を書き表し、重要な事項だけ掘り下げられる』『エンドユーザーと開発者とやり取りする過程で新たなアイデアが生まれやすい』といった手応えを得た」(同社の市谷主任)という。

 ただし、「価値がある」「テスト可能」といったルールに則った表現のストーリーを作る際には、適切なファシリテーションも必要になる。今回のセミナーでは、模擬演習でそれを体験することで、そうしたノウハウも吸収できるという。

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