図1 中期事業計画の成長戦略
図1 中期事業計画の成長戦略
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図2 新規事業分野
図2 新規事業分野
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 ジュピターテレコム(J:COM)は2012年4月24日、「2012年度第1四半期決算説明会」を開催した。代表取締役社長の森修一氏が登壇し、中期事業計画の概要を報告した。「本来は2012年1月に発表したかったが、新規BS放送の開始やスマートフォンの普及、動画配信サービスのHuluの日本上陸など、環境の変化があった。これらを考慮したうえでまとめたもの」という。

 ケーブルテレビ事業の成長戦略として5項目を、メディア事業では4項目を掲げた(図1)。ケーブルテレビ事業の項目は、「RGU獲得重視から世帯純増・世帯ARPU重視へ」「未開拓市場の効率的獲得の推進」「顧客ニーズに沿った商品競争力の強化と多様化」「既加入者サービスの向上、ユーザビリティーの改善」「KDDIグループ、住友商事グループとの協業のさらなる推進」である。メディア事業に関しては、「独自コンテンツの保有・囲い込み」「チャンネル事業の強化」「コンテンツ配信事業(プラットフォーム)強化」「広告事業強化」を挙げた。

 定量目標としては、2015年までの目標を発表した。売上高は2011年度の3691億円に対し、4500~5000億円を目指す。既存事業に加えて「新規事業やM&Aおよび提携、コスト構造改革によって達成を目指す」(森氏)という。新規事業としては、例えば他社との幅広い提携の下での生活支援サービスなどを挙げた。さらに「TV Everywhere」や「Over The Topサービス」も展開する。これらのサービス展開に当たり、住友商事グループの事業資産やKDDIとのアライアンスを最大限に活用する(図2)。さらにマルチ端末時代を見据えて、ユーザビリティーの向上を目指し、オープンIDを採用して認証課金基盤プラットフォームを再構築する(図2)。

 さらにデジタルサービスや宅内デジタル端末の多様化によって、サービスが使いたくても使えない人が増えているという視点から、顧客の自宅に訪問して悩みを解決するという「ホーム・コンシェルジュ・サービス」(仮称)も開始する(図3)。2500人の直接訪問営業員や2600人のカスタマーセンターの人員、3500人のサービスエンジニアなどの人的資源を活用する。「顧客がわが社のサービスを使いやすくすることをコンセプトとする」という。

 総加入世帯数は、2015年に500万程度を目指す。ARPUについては7000円台(2011年比1~2%減を想定)を、平均月次解約率(RGU当たり)は0.8%台(同0.1ポイント程度改善)を、長期契約比率は50%(同30ポイント程度増)台を2015年目標として挙げた。

<M&Aおよび提携戦略の方針も説明>

 M&Aおよび提携戦略についての方針も述べた。ケーブルテレビ事業については、引き続きM&A・提携を活用してエリアを拡大する。メディア事業では、川上・川下事業や周辺事業を取り込むという。生活支援サービスなどの新規事業では、新事業を早期に一定規模に成長加速させるため、買収や戦略的提携を積極的に検討する。さらにアジア市場への展開も検討する。アジアへの展開については、記者からの質問に答える形で、「まずはコンテンツをアジアに輸出したい。我々のコンテンツだけでなく、J:COMが関与しているコンテンツを想定している。東南アジアは豊かになっていくので、この波に乗り遅れないようにしていく」とした。

 J:COMの2012年度第1四半期(2012年1~3月期)の連結業績も報告した。売上高は925億1200万円(前年同期比0.8%増)、営業利益は184億7600万円(同10.4%減)だった。「期の初めの業績予想に沿って進捗しており、通期では増収増益を見込んでいる」(専務取締役の青木智也氏)という。

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