野村総合研究所(NRI)は、BCP(事業継続計画)策定の新コンサルティングサービスを2012年5月21日から提供することを発表した。地理情報システム(GIS)をベースにしたシミュレーションツールで、自社や取引先の拠点の被災状況を短時間で分析し、サプライチェーンの堅牢性評価や従業員の参集計画策定に役立てる。シミュレーションツールで被災状況を見える化したうえで、経営陣が事業の優先順位などを討議し、BCPを策定するプロセスを円滑に進める。

 新サービスは2つのシミュレーションツールを中核に展開する。1つ目は拠点被災シミュレーションツール。中央防災会議が提供する最新の想定災害データを基に、災害発生時の震動分布や津波浸水、インフラ寸断などの被害情報をハザードマップ上に展開。企業の本社や生産拠点、データセンターの被災状況をシミュレートする。

 加えて、部品などのサプライヤーの被災状況も可視化できる。東日本大震災では、部品メーカーなど取引先の拠点が被災することでサプライチェーンが損傷し、製品を提供できなくなるリスクがクローズアップされた。自社拠点と同様、取引先の拠点もハザードマップ上に登録しておくことで、被災状況をシミュレーションする。これらの結果を基に、取引先の階層構造を整理した「サプライチェーンツリー」を策定することで、被災状況に応じてサプライチェーンの復旧日数を割り出すなど、堅牢性の評価も可能になる。

 2つ目のツールである「従業員参集シミュレーション」は、災害発生時に、対策本部や拠点の運営に必要な人員が参集可能かを分析する。従業員の住所をハザードマップに登録し、交通網などのインフラが寸断された場合に、各拠点に何時間で参集できるかを洗い出す。この結果に基づいて、一定時間内に出勤可能な社員の業務分担などをBCPに盛り込む。

 NRIではこれらのツールで被災時の状況を見える化し、経営陣や事業部などがBCPを策定するプロセスを支援する。ツール利用費用は、拠点被災シミュレーションが年間380万円から、従業員参集シミュレーションが490万円からとなる。これらの費用に加えて、サービス内容に応じてNRIと年間コンサルティング契約を結ぶ。