写真1●KDDIが2012年5月下旬に発売する「HTC J ISW13HT」
写真1●KDDIが2012年5月下旬に発売する「HTC J ISW13HT」
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●説明会に登場したKDDIの田中孝司社長と、台湾HTCのピーター・チョウCEO(最高経営責任者)
写真2●説明会に登場したKDDIの田中孝司社長と、台湾HTCのピーター・チョウCEO(最高経営責任者)
[画像のクリックで拡大表示]

 KDDI(au)は2012年4月20日、米グーグルの「Android 4.0」を搭載したスマートフォンの新機種「HTC J ISW13HT」(台湾HTC製)を5月下旬に発売すると発表した。HTCが2月末に「Mobile World Congress(MWC)2012」で発表した「HTC One S」をベースに端末デザインや使い勝手を高め、日本定番機能への対応を強化した点が特徴だ。

 ISW13HTは米Qualcommの「Snapdragon S4プロセッサ」(1.5GHz、デュアルコア)に4.3型有機ELを搭載。高速無線「WiMAX」の通信機能を備え、周辺のパソコンや携帯型ゲーム機などを最大8台までネットに接続(テザリング)できる。

 HTCとして初めて「ワンセグ」や「おサイフケータイ」、赤外線通信、緊急速報メールなど日本の定番機能に対応しつつ、端末の厚みは10mm(最厚部は11.2mm)に抑えた。電池容量は1810mAhで、約560分の連続通話が可能。KDDIの直販価格(毎月割適用時)は新規契約で2万4120円、機種変更で2万9160円。

「もうデジカメは要らない」

 カメラや音楽関連の機能も強化した。まず、カメラとビデオの撮影を間違えやすいことからそれぞれの専用撮影ボタンを用意。光を従来より4~5割多く取り込めるf/2.0レンズのほか、HDR撮影やスマートフラッシュ機能などの搭載によって、暗闇や薄暮でもきれいに写真を撮影できるようにした。

 カメラの起動時間は「撮影機会を逃さない」0.7秒。0.2秒のオートフォーカスで最大99枚まで連続撮影できる。ビデオ撮影中にシャッターボタンを押して写真を撮れるほか、ビデオ再生中にシャッターボタンを押して写真を取り出すことも可能。HTCの小寺康司CPO(最高商品責任者)は「もうデジカメは要らない」と自負する。

 音楽関連では、2011年8月に買収を発表した米Beats Electronicsの技術を用いて臨場感溢れる音を再現できるようにしたほか、パソコン内にある音楽やビデオを無線LAN経由で簡単にスマートフォンに取り込めるソフトも用意した。

HTC「日本で鍛えられて再度世界へ」

 スマートフォンで出遅れたKDDIの田中孝司社長は2年程前、HTC端末が欧米で評価が高く使い勝手も良いことから、自らHTCの台湾本社に押しかけてピーター・チョウCEO(最高経営責任者)と交渉。昨年(2011年)4月にWiMAX対応スマートフォン1号機「HTC EVO WiMAX ISW11HT」の発売にこぎつけた。

 それだけにHTC EVOは戦略商品で田中社長のお気に入りだったが、販売台数はそれほど伸びなかった。ただ「内部調査では本当にギーク層に受け入れられており、満足度は一番高い。もっと一般の人に広めたいと思った」(田中社長)という。

 そこで日本定番機能への対応や日本人になじみやすいカラフルで持ちやすい端末の開発をHTCに持ちかけ、今回の提携に至った。KDDI担当者は台湾に何度も足を運んで開発を支援した。同社は5月中旬に夏商戦向けの新機種を発表する予定だが、今回の端末はその中でも戦略商品の位置付けという。

 一方、HTCにとって今回は異例の対応。「今まで1つの国のために端末を作ることは一度もなかった」(HTC NIPPONの村井良二社長)。世界全体でみれば日本は一つの小さな市場にすぎないが、「日本は顧客の目が世界で一番厳しい。日本で鍛えられて再度世界に出ていける。特に日本のトレンドはアジアに流れる傾向にある。端末出荷台数以外の副次的な面で大きな意味がある」(村井社長)と判断した。

 KDDIの田中社長は今回の協業について「これまでは海外のヒット商品をそのまま日本に持ってくるのが普通だったが、今回は協力して一緒に(新製品を)出せた。日本における(海外製)スマートフォン(提供)のマイルストーンにしたい」と評した。

 通信事業者との密な連携はこれまで、日本市場における国内メーカーの強みのよりどころとなっていたが、こうした取り組みが増えれば国内メーカーはさらに追い込まれることになりそうだ。