NECにとってのSDNの位置付け、期待は。
NECはC&C(コンピュータ&コミュニケーション)カンパニーだ。コンピュータ技術とコミュニケーション技術の融合を追求し、価値を創りだすことが事業となっている。その点でいくとSDNはまさに我々にとってC&Cそのもの。NECが目指してきた中心にSDNが位置している。当然NECがチャレンジしないといけない分野だ。
この会場では、「NECはなぜOpenFlow対応機器をいち早く市場に出せたのか」と質問される。他社から奇抜なアイデアに、わけも分からず投資したと思われている。しかし我々は、長い通信の歴史観からOpenFlow、SDNに飛び込んだ。
NECは通信からスタートした会社であり、通信の長い歴史を背負っている。手動交換器からステップバイステップ交換器、クロスバ交換器、電子交換機、デジタル交換機、IPスイッチ/イーサネットスイッチと、これらはほぼ20年ごとに世代交代している。この20年間はIPが中心にあったが、そろそろ次の技術に移る時期と考えていた。その点でOpenFlow、SDNは新たなイノベーションが始まったと確信した。我々としては、当然投資をしてマーケットを作り、リーディングポジションを取るべく行動してきた。
SDNは、IPそのものを置き換える技術ではなく、IPのハンドリングの仕方を変える仕組みだ。自立分散型のルーターから、外部から集中制御する形になる。クラウドサービスなど新しい動きの中で、ネットワークを運用管理する負担が日に日に高まっていた。このような状況を開放できる。間違いなく大きな変革だ。
このSDNの市場には、これまでの通信市場の枠を超えた様々なプレーヤーが集まってきている。異質なプレーヤーが集まってくるとイノベーションが起こりやすい。SDNは従来のネットワーク以上の存在になってくるだろう。
もっとも我々がこの市場にいち早く飛び込めたのは、世界的にみれば、既存のルーター、スイッチ製品の市場においてメジャーベンダーではなく、失うものが少なかったという側面もある。
SDNは、これまで統合化されていたスイッチのハードとコントロール機能を分離する。メインフレームからPCへの変化で起きたように、それぞれのレイヤーで競争が加速し、機器のコモディティー化も進むのではないか。
SDNは、通信機器のPC化ではなくオープン化と考えるべき。スイッチとコントロールのアンバンドル化が基本だ。それぞれの分野に得意なプレーヤーが切磋琢磨して業界を進化させていくだろう。
まずNECとしては、この分野で強いブランドを確立することが第一だと考えている。仮にコモディティー化が進んだとしても、我々は負けるとは思っていない。この分野でNECブランドを確立した上で、台湾ベンダーにアウトソースして、ブランドの力を生かしてコスト競争力のある製品を売っていく道もある。
とはいえSDNはまだ市場が立ち上がったばかりであり、これからますます発展する。コモディティー化以外にも様々なビジネスの可能性があり、NECの強みを生かせる分野にまずは集中する。例えば、OpenFlowと従来のスイッチの機能を兼ね備えた機器が当面は市場で求められる。それをつかむのが第一だ。
さらに通信事業者がSDNを採用していく中で、キャリアグレードの信頼性を持った機器が要求される。このような分野はキャリアグレードの製品を作ってきたNECのようなベンダーに強みがある。