今夏に開始する予定の仮想ネットワークサービスの進捗状況は。
着々と準備を進め、現在追い込みをしているところだ。夏に開始予定のサービスは、昨年の「NTT Communications Forum 2011」で打ち出した「グローバルクラウドビジョン」に基づいて、ポータル画面からワンストップで、コンピュータリソースとリソース間のコネクティビティを提供できるようにしていく。仮想ネットワークだけを提供するのではない。
SDNを使った仮想ネットワークの最大のメリットは、個々のネットワーク機器を設置・設定する時間を短縮できる点だ。ネットワーク設定の複雑さも軽減できる。これによって企業ユーザーはネットワークリソースを含めたサービスをオーダーした後、素早く利用できるようになる。我々にとってはネットワークの運用管理の面でコスト削減できる利点がある。
我々のサービスでは、データセンター内の仮想ネットワークを含めたワンストップクラウドサービスに加えて、豊富なバックボーンを活用してデータセンター間についても同様のサービスを提供していく。
このような体制を整えることで、企業ユーザーへのサービス提供の方法を変えられる。これまでは専用線やWANなどをパーツごとに選択してもらう形が多かった。これからは企業ユーザーが何をしたいのかを言ってもらえれば、ワンストップでネットワークを含めて提供できるようになる。
サービス提供用のネットワーク基盤の構成は。
夏に開始するサービス用の基盤はほぼ準備が終わっている。検証自体はOpenFlow対応ハードスイッチ、ソフトスイッチの両面でやっているが、最初のサービス開始時はハードスイッチによる提供が先になるだろう。
SDNは新たな取り組みであるため、苦労もあったのではないか。
コンピュータリソースを管理するクラウドコントローラーとSDNを実現するネットワークコントローラーをいかに連携させるのかに苦労した。ここがワンストップでサービスを提供する上でキーになる。互いに会話できるかどうかかから始まり、確認に時間がかかった。
SDNについてもただ動作すればよいのではなく、我々が求める品質が必要になる。OpenFlowはあくまでSDNを実現するためのプロトコルであり、サービス仕様を実現するためのソフトウエアの実装が大変だった。ただし限られた時間の中で、かなりスピーディーに進められたと思う。夏のサービス開始に向けたこの経験が、今後のサービス拡充にも生きると考えている。
SDNはネットワーク機器をレイヤー分離することで、市場自体を変えるポテンシャルがあると感じる。また米グーグルのようなプレーヤーがOpenFlow対応スイッチを自作するなど、これまでのネットワーク市場とは違った動きも出てきている。
ネットワーク機器がレイヤー分離することで、機器のコモディティー化が進むだろう。我々としては機器のコモディティー化によるCAPEX(設備投資のための支出)の低減を期待している。
機器の自作はサーバーも自作しているグーグルのようなプレーヤーならありえるが、我々が同じようなアプローチを取ることは難しい。グーグルの動きを見て、各ベンダーがどのように対応していくのか興味深く見ていきたい。
伊藤部長はOpen Networking Foundation(ONF)のボードメンバーでもあり、OpenFlowの標準化にもかかわっている。NTTコムとして追加したいOpenFlowプロトコルのスペックなどは。
ONFに参加するのはグループ内で1社という決まりがあるため、NTTグループを代表して私がONFに参加している。実はNTTグループの中にはOpenFlowについての連絡会があり、何か動きがあるたびに各社で情報を共有している。
近く勧告が出るOpenFlow 1.3が一つの区切りになると捉えている。まずはOpenFlow 1.3の中身をしっかりレビューした上で、次のバージョンから追加要望があれば訴えていきたい。
NTTグループとしては、OpenStackやCloudStackなどのクラウド基盤との連携に注目している。このようなクラウドコントローラーとOpenFlowの連携は、もう少し標準化してもよいかもしれない。