「当社のデータセキュリティの取り組みにより、Visaカードの不正利用発生件数は20年間で3分の2減少した」---。ビザ・ワールドワイド・ジャパンは2012年4月19日、米Visaのセキュリティ戦略に関するカンファレンスを開催。Visa チーフ・エンタープライズ・リスク・オフィサーのエレン・リッチー氏(写真)が登壇し、同社の取り組みとその成果について説明した。
リッチー氏によると、現在、Visaカードのグローバルでの詐欺や不正行為の発生率は取引100ドル当たり6セント未満であり、1992年から2011年にかけて継続して減少している。不正利用が減っている要因の1つには、「動的データ認証が可能なEMVカード(EMV規格のICチップを搭載したクレジットカード)の普及拡大がある」(リッチー氏)という。EMVカードに搭載されたチップ技術では、1回の決済ごとに動的な認証データを作成して認証を行なう。そのため、カードの複製が難しく、万が一カード情報が盗難された場合でも不正利用されるリスクが低くなる。
同社では、EMVカードの普及を促進する取り組みとして、加盟店へのEMV対応端末の整備を推奨するプログラム「TIP(テクノロジー・イノベーション・プログラム)」や、ICチップ導入が遅れていた米国市場でEMVカードの利用を促進する活動などを展開してきた。その結果、現在ではグローバルで13億枚、アジア太平洋地域では3億3600万枚のEMVカードが発行されている。
一方で、EMVカードの普及が進んでいる地域では、偽造カードによる対面取引での不正が減少する半面、Eコマースなどの非対面取引での不正が増加する傾向にある。EMVカードの利用率が高い香港では、2011年に偽造カードの利用が前年比18%減少したのに対して、非対面取引での不正は同72%増加している。この問題について、リッチー氏はインドでの事例を挙げ、「Eコマースでの不正は、2要素認証などを行うVisa認証サービスを導入することで防止可能」だと説明した。2010年に2要素認証を導入したインドでは、2008年から2012年の3年間で非対面取引での不正が80%減少している。
今後の取り組みとしては、「Visaカードを利用する消費者自身も参加するデータセキュリティの仕組みを作って行く」(リッチー氏)。具体的には、クレジットカードを利用するとユーザーへ通知が届くシステムの構築や、ユーザーがSNSに書き込んだ情報からパスワードを推測するなどの犯罪手口に関する情報提供などを実施していく。
タイトルと第1段落で「3分の2に減少」としていましたが、「3分の2減少」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2012/04/20 12:02]