NTT東日本は2012年4月18日、公衆無線LANサービスとフレッツ光におけるIPv6への取り組みについて記者向けの説明会を開催した。

無線LANの電波干渉は共用AP設置で回避

 NTT東日本では、フレッツ光利用者向けのオプションサービスとして、公衆無線LANサービス「フレッツ・スポット」を提供している。携帯電話事業者などがアクセスポイント(AP)を急速に増やしている公衆無線LANサービスは、ユーザーの利用機会が増えるに伴って、様々な課題が表面化しているという。NTT東日本は具体的に「電波干渉」「品質低下」「セキュリティ」「設定の煩雑さ」「使い勝手の悪さ」の五つを課題として指摘した。

 電波干渉は、複数の公衆無線LAN事業者が同一店舗内などの狭い範囲で複数のAPを設置することで発生する。公衆無線LANサービスでは、利用中の周波数帯に近いチャンネルで別の機器が通信すると、干渉が起きて通信速度が大きく低下する。また急速に設置が進むAPの中には、APからインターネットへのバックボーンとして3G回線やLTE、WiMAXなどの無線ネットワークを用いている場合があり、そうしたAPに複数の端末が同時アクセスすると、通信品質や速度の低下が懸念されるという。

 公衆無線LANでは、電波上をデータが流れていることから、盗聴や不正利用を防止することが必要となる。対策としてデータの暗号化、MACアドレスやIDを用いた認証が一般的に行われているが、あまり厳重にすると設定や認証が複雑になり、利用者にとって使いにくくなる。このほか、モバイル端末が無線LANのAPを常に探すことによる電力消費の増大や、無線LANサービス圏内ぎりぎりの場所で利用した場合の速度低下――といった課題を指摘した。

 こうした課題に対してNTT東日本では、APの設置手法を見直したり、様々な工夫を凝らすことで解決しているという。電波干渉に対しては、複数事業者が個々にAPを設置するのではなく、物理的に一つの基地局と回線に複数事業者のAPを相乗りさせる「共用AP」の設置を求めたり、利用可能なチャンネル数が多く複数のAPを共存させやすい5GHz帯への対応を進める――といった取り組みを実施している。

 セキュリティについては、無線区間のデータ通信用として、従来よりも強固な暗号化方式であるWPA2への対応を進めている。またモバイル無線LANルーター「フレッツ光ポータブル」を使えば、利用者は様々な無線LAN対応製品をフレッツ光や公衆無線LAN、3Gモバイルデータ通信といった複数の回線からその都度最適なものに自動的に切り替えながら通信できる。

フォールバックにはAAAAフィルターで対応

 世界のインターネット関連業界が、IPv6移行に向けた態勢を整えることを目的に、Internet Society(ISOC)は2012年6月6日に「World IPv6 Launch」の実施を予定している。これを契機に多くのインターネット上のサービスやコンテンツがIPv6への対応開始を予定しているが、「フレッツ光」のユーザーがIPv6に対応したWebサイトを閲覧するとコンテンツの表示が遅くなる問題「フォールバック」が発生することから、この問題に対する対策を実施する。

 NTT東日本ではフォールバックに対する当面の対応策として、コンテンツ事業者側あるいはインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)側のDNSに、IPv6のアドレスを返さないようにするAAAAフィルターを設定することについて、2011年12月以降主要ISP事業者やコンテンツ事業者を交えた協議を実施し、当面の対策として合意している。なお、実際のAAAAフィルターの設定実施についてはISP各社の判断に委ねられている。

■変更履歴
最終段落にISP事業者やコンテンツ事業者との協議に関する情報を追加しました。本文は修正済みです。 [2012/04/18 21:05]