Googleアートプロジェクトを記念して、東京国立博物館エントランスホールでテープカット。左から館長の銭谷眞美氏、参議院議員で文部科学省元副大臣の鈴木寛氏、グーグル製品開発本部長の徳生健太郎氏。銭谷氏の後ろにあるのは、ストリートビュー撮影に使用した可動式カメラ
Googleアートプロジェクトを記念して、東京国立博物館エントランスホールでテープカット。左から館長の銭谷眞美氏、参議院議員で文部科学省元副大臣の鈴木寛氏、グーグル製品開発本部長の徳生健太郎氏。銭谷氏の後ろにあるのは、ストリートビュー撮影に使用した可動式カメラ
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Googleアートプロジェクトのトップページ。東京国立博物館所蔵の「観楓図屏風」が使われている
Googleアートプロジェクトのトップページ。東京国立博物館所蔵の「観楓図屏風」が使われている
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同図右側に描かれる、楓を鑑賞する女性達の一部。肉眼では見づらい着物の柄や人物の動作(例えば乳児に乳を含ませる女性)まで確認できる
同図右側に描かれる、楓を鑑賞する女性達の一部。肉眼では見づらい着物の柄や人物の動作(例えば乳児に乳を含ませる女性)まで確認できる
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各作品には、プロジェクトに参加する美術館が用意する解説が付く。これは英語だが、日本語を用意する作品もある。当該美術館にない同一芸術家による作品も、ほかの美術館が同プロジェクトに画像を提供していれば検索できる
各作品には、プロジェクトに参加する美術館が用意する解説が付く。これは英語だが、日本語を用意する作品もある。当該美術館にない同一芸術家による作品も、ほかの美術館が同プロジェクトに画像を提供していれば検索できる
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 グーグルは2012年4月9日、美術作品の高解像度画像や美術館内の360度画像をインターネット上で見られるサービス「Googleアートプロジェクト」に、初めて国内の美術館・博物館が参加したと発表した。

 参加した美術館・博物館は、足立美術館(島根県安来市)、大原美術館(岡山県倉敷市)、国立西洋美術館(東京都台東区)、サントリー美術館(東京都港区)、東京国立博物館(東京都台東区)、ブリヂストン美術館(東京都中央区)の6館。これらの施設が所蔵する国宝16件、重要文化財51件を含む美術作品計567件の高解像度画像が新たに閲覧できるようになった。また、東京国立博物館と足立美術館については、Googleマップと同様の「ストリートビュー」の機能で、館内の様子が見られるようになった。

 さらにグーグルは今回、東京国立博物館所蔵の国宝「観楓図屏風」(狩野秀頼)、足立美術館所蔵の「紅葉」(横山大観)の計2点を70億画素の超高解像度で撮影、同プロジェクト上に公開した。肉眼では見づらい細かい描写を詳細に閲覧できる。

 東京国立博物館館長の銭谷眞美氏は、「(同館は)高精細の画像を今までもインターネットで公開している。ただし海外からのアクセスは少ないのが現状。実際、調査をすると、海外からの来館者は2割くらいにとどまる。グーグルが展開するプロジェクトの世界的なプラットフォームに参加することで、日本の文化を世界に知ってもらう大きなチャンスになる」と、同プロジェクトへ期待を寄せた。

 同館学芸企画部広報室長の小林牧氏は、同館が公開する105点の作品について、「絵画だけではなく、彫刻や工芸作品、アイヌ資料まで幅広い内容にわたる」と胸を張る。グーグルによる超高解像度撮影に「観楓図屏風」を選んだ理由については、「現在展示してあり、ストリートビューで見られる作品の中で、鑑賞者が受け入れやすいため」(小林氏)と説明した。

 東京国立博物館がストリートビューで公開した場所は、本館の1~2階(分野別・企画展示、日本美術)と、法隆寺宝物館の1~2階(古代美術)。小林氏によると、2011年10月に延べ5日間を使い、この撮影のためだけに展示内容を変更。普段は同時に展示することのない作品を並べるなどして撮影に臨んだという。

 グーグル製品開発本部長の徳生健太郎氏は「今回のプロジェクトをきっかけにして、今後もGoogleアートプロジェクトに日本の作品を追加していきたい」と意気込む。美術館・博物館が同プロジェクトに参加するために「参加費用は徴収していない。グーグルが技術を提供し、施設が作品の提供をしている」(徳生氏)という。

 Googleアートプロジェクトは2011年2月、第1弾として欧米の美術館17館の所蔵作品およそ1000件を公開した。今回の第2弾では、アジアや南米地域の美術館・博物館を含む134館を追加。第1弾と合わせ40カ国計151館、6000人以上の芸術家による3万件以上の所蔵作品を閲覧できるようにした。ストリートビュー参加施設は46館。日本の美術品のほか、世界の美術館、博物館のコレクションも拡大したという。

 世界の美術館・博物館などからの主な追加作品は以下の通り。

・アクロポリス博物館(ギリシャ) 「パルテノン神殿東フリーズ、ブロックVI」
・ウィーン美術史博物館(オーストリア) 「バベルの塔」(ピーテル・ブリューゲル)
・オルセー美術館(フランス) 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」(ピエール=オーギュスト・ルノワール)
・オランジュリー美術館(フランス) 「ポール・ギヨームの肖像」(アメデオ・クレメンテ・モディリアーニ)
・シカゴ美術館(米国) 「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(ジョルジュ・スーラ)
・ホワイトハウス(米国) 「ジョージ・ワシントン」

 なお、GoogleアートプロジェクトのWebサイトは、Web記述言語「HTML5」の新技術を利用しており、新技術に対応していないInternet Explorerで閲覧する場合は、無料のプラグイン「Google Chrome Frame」をインストールする必要がある。