写真●左から、GMOインターネットの熊谷氏、アイスタイルの吉松氏、スタートトゥデイの前澤氏、グリーの田中氏
写真●左から、GMOインターネットの熊谷氏、アイスタイルの吉松氏、スタートトゥデイの前澤氏、グリーの田中氏
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 2012年3月28日に開催されたイベント「トーマツ ベンチャーサミット2012」のパネルディスカッションには、成長を続けるスタートアップ企業4社のトップが顔をそろえた(写真)。登壇したのは、GMOインターネット代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿氏、アイスタイル代表取締役兼CEOの吉松徹郎氏、スタートトゥデイ代表取締役の前澤友作氏、グリー代表取締役社長の田中良和氏の4氏である。進行役は、トーマツ ベンチャーサポート代表取締役社長の吉村孝郎氏が務めた。

 4氏は、海外戦略や経営者としての心構えなどについて語った。中でも興味深かったのが「成功への転換点」に関する話題だった。このテーマで口火を切ったのが熊谷氏。同氏は、生き残りのカギが「理念や夢を共有できていること」だとした。同社では、グループ全体の経営理念として「スピリットベンチャー宣言」を掲げている。

 同氏が「長い間存続する組織」を研究したところ、歴史上最も長く続いている組織が宗教であることに気付いたという。宗教組織には、定期的に顔を合わせる、同じものを読む・歌う、同じものを身に付ける、同じポーズをとる、神話があるなど共有体験があることから、同社でも「定期的に理念を読み合わせる」などの共有体験を重視しているとした。

 前澤氏も理念が大事という点に同意。併せて、同社でも年に数回、社員が集まるイベントなどの共有体験を重視していることを紹介した。

 もう一つ興味深かったのが「危機を乗り越えた体験」の話である。熊谷氏は、上場後に事業を急拡大した結果として400億円の損失を計上したことに触れ、それを乗り越えられた理由として「助けてくれる支援者がたくさんいた」ことと「社員の仲間が誰も辞めなかった」ことを挙げた。さらに「体を鍛えていた」ことも紹介し、「冗談のように聞こえるかもしれないが、弱気にならなかった、あきらめなかったのは健康を維持できていたから」とし、日ごろからの体調管理の重要性を語った。

 吉松氏は、債務超過時に次々と周囲の人が離れていく中で1億円を出資してくれたエンジェル(個人投資家)との出会いのエピソードを紹介。「事業計画を説明しない、まるで禅問答のような対話」の末、出資してくれたのだという。吉松氏は「事業を成功させるには運、縁、恩が大事だと感じている」といい、「運がいいかどうか分からないが、お会いした人にはすぐにお礼のメールを書くなど運を引き寄せられるような努力は大事だ」とした。

 海外事業については、田中氏の戦略がユニーク。FacebookやZyngaなどの海外拠点を調べて、あえて重複させているというのだ。それは、過去の日本のIT企業やネット関連企業を振り返った結論として「世界一でないと、日本国内でも生き残れない」と危機感をもって考えたからだという。現在、モバイル・ソーシャルゲームを軸に海外展開を進めているのも、日本に競争力があるからだとした。

 以上のやりとりはイベントの中のほんの一部で、注目企業4人のパネルディスカッションでは、随所にそれぞれの経営論だけでなく人生観などが語られた。

 今回のイベントでは、パネルディスカッションのほかに民主党政策調査会長の前原誠司氏が「日本の将来とベンチャー企業について」というテーマで、エネルギーや観光政策など政府の成長戦略を解説。イベント終了後には、スタートアップと大企業の新規事業担当者とのマッチングやネットワーキングのための懇親会が行われた。