写真●5月15日に日本IBMの社長に就任するマーティン・イェッター氏(右)と、会長に就任する橋本孝之社長(左)
写真●5月15日に日本IBMの社長に就任するマーティン・イェッター氏(右)と、会長に就任する橋本孝之社長(左)
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 日本IBMは2012年3月30日、米IBMコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデントで独IBM会長のマーティン・イェッター氏(写真右)が5月15日付で社長に就任し、同日付で橋本孝之社長(写真左)が会長に就く人事を発表した(関連記事)。

 橋本社長は「IBMは常に、世界で活躍できる人材をライトポジションに充ててきた」と強調。イェッター氏も「ビジネスがグローバル化する中で、(外国人が日本IBMの社長に就任する)今回の人事は自然な流れだ」と同調した。会見での一問一答は以下の通り。

日本IBMの人材ではなく、海外から社長を招いた理由は。

橋本社長:IBMはグローバルカンパニーで、常に世界で活躍できるリーダーシップを育成し、ライトポジションに充てることをやってきた。IBMの経営資源は、全世界にある。全世界の経営資源を統合して、日本に持ってくることが今後は重要になる。その意味で、国籍を問わず、最もふさわしい人材を選択した。

東京地方裁判所が3月29日に、スルガ銀行と日本IBMが争っていた裁判の判決を出した(関連記事)。このことが今回の人事に影響を及ぼしたのか。

橋本社長:今回の人事とは全く関係ない。

金融危機に苦しむ欧州ですら増収なのに、日本IBMは直近の四半期で減収になり、マイナス成長が続いている。この状況をイェッター氏はどう立て直すのか。

橋本社長:。直近の足下の数字が悪いことは事実だが、それが交代の大きな要因ではない。マーティン(・イェッター氏)が実際に日本で仕事をするのは、5月15日以降になる。その際に改めて記者会見したい。

日本の課題についてどう見ているか

イェッター氏:日本の課題は、世界の成熟市場と共通している。非常に高度な産業を抱え、教育システムを持っている。だが、景気が悪い。

 今後、天然資源に乏しい国はイノベーションなしには成長できない。そのイノベーションはグローバルに生まれるもので、各国の国境内で生まれるものではなくなっていく。

 自動車業界を例にすると、トヨタ自動車やホンダ、独BMWはいずれも、グローバルに開発を進めている。加工や組み立て、サプライチェーンがグローバル化する中で、21世紀は、グローバル人材の活用の世紀になる。

 IBMはグローバル化への取り組みを10年前から始めており、多くのグローバル人材を抱えている。そうした人材を積極的に日本に投入することで、顧客企業のグローバル化を手伝えると考えている。

グローバル資源を活用すると、何が変わるか。

橋本社長:元々IBMはグローバルカンパニーだが、よりその傾向が強まったのは過去10年くらい。今後は各国の市場に最適な資源をグローバルから投入することが必要になる。具体的には45日間の引継ぎが終わった段階で話したい。

日本IBMの社長は長らく日本人が務めた。(外国人社長として)どう感じるか。

イェッター氏:今回の人事は非常に自然な流れ。今後もっと自然になっていく。米IBMのリーダー層は南アフリカ人やイタリア人など非常に多様だ。例えばドイツ銀行の社長は、2代続けてドイツ人ではない。ビジネスのグローバル化は自然な流れであり、人材の採用もグローバルにやらなければならない。

独IBM時代の実績は。

イェッター氏:組織変革やクラウド事業を推進するなど、様々な企業改革を主導した。独IBMはかつて、ドイツに深く根ざしたビジネスをやっていたが、オープンで近代的な法人に生まれ変わった。

 日本IBMでも顧客に貢献できると考えている。日本でのチャレンジを楽しみにしている。