Apple製品の製造を手がける中国工場の労働環境について調査していた米公正労働協会(FLA)は現地時間2012年3月29日、複数の生産施設で超過勤務や、賃金不足、安全衛生上の問題が多く見つかったと報告した。

 FLAは米Appleの依頼を受け、中国・富士康科技(Foxconn Technology)の工場における従業員の労働、生活環境について監査を実施していた(関連記事:中国のApple製品組立工場、従業員の賃金引き上げを明らかに)。

 FLAによると、3万5500人の従業員を対象にした1カ月にわたる調査で、富士康科技の工場にはFLAの行動規範や中国の労働基準法に違反している事例が50件以上確認された。繁忙期には、FLAと中国の基準をともに大きく上回る週60時間超の労働があったり、1日の休みもなく7日以上連続して勤務していた事例もあった。

 また、超過勤務分の賃金が十分に支払われていない実態も明らかになった。富士康科技では残業代を30分刻みで記録しているため、例えば29分であれば残業代はゼロになり、58分であれば30分の残業代しか支払われない。こうした状況を改善するようFLAは富士康科技とAppleに指摘しており、両社は今後公正な報酬を支払うこと、過去にさかのぼって不足分を支払うことなどに合意した。

 このほか、保護具が装備されていない、避難路が閉ざされている、けがや事故の際の連絡が徹底されていないといった安全上の問題も多数見つかった。富士康科技はこれらを是正することにも合意している。今後は、超過勤務を減らし、従業員の所得水準を保つため賃金を上げる。さらに雇用を増やして生産体制を維持する。福利厚生も見直すとFLAは報告している。

 富士康科技は、台湾の鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)が傘下に抱えるEMS(電子製品製造受託サービス)大手で、Appleの最大のサプライヤー。iPhone、iPad、iPod、Mac(Macintosh)の組み立てを手がけている。2010年から2011年にかけて、若い工員の自殺が相次いだり、爆発事故で工員が死亡したりし、その労働環境や管理体制などをめぐって米国の人権擁護団体などが厳しく非難している。

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