写真1●インテルの富澤直之情報システム部長
写真1●インテルの富澤直之情報システム部長
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 インテルは2012年3月27日、社内の情報システムについての取り組みを発表した。具体的には、2011年を通したグローバルにおける社内IT施策の中身。ビジネスインテリジェンス(BI)の活用やセルフサービス化、BYOD(Bring Your Own Devices、私物デバイス活用)の推進といった実践内容を紹介し、IT投資が生産性の向上に寄与していることを強調した。

 2011年における取り組みのうち、特に強調した施策の1つがBIの活用。「コスト削減やビジネス機会の創出に貢献した」(富澤直之情報システム部長、写真1)。例えば製品の供給計画業務では需要予測にかかる所要時間を22%短縮できたという。そのほかにも、半導体の製造プロセスの問題検出、半導体の設計活動の効率化、有望な見込み客の特定といった業務にBIを適用している。

 また「セルフサービス化」を推進中だ。半導体技術者が使うソフト開発環境の導入、社員向けのシステムヘルプデスク、マーケティング部門によるWebコンテンツの用意といった各種の業務について、社員が自力で実施できるようにする環境を整備。これにより、業務の所要時間の短縮やコスト削減を実現した。

モバイル機器の58%が個人所有

 最近話題のBYODも推進している。インテルで使われている携帯電話やスマートフォン、タブレット機などのモバイル機器のうち、58%に当たる約1万7000台が個人所有の機器。BYODの推進によって、社員は通勤時間や会議の合間などの“すき間時間”を効率的に使えるようになったという。その時間の総計は1日当たり47分間としている。

 また、BYODの推進と並行して、モバイル機器で動作する社内用ビジネスアプリケーションも用意している。メッセージングや会議室予約など7種類のアプリケーションをリリース済み。現在、28種類のアプリケーションを開発中という。

 BYODにはセキュリティの強化も欠かせない。インテルではマルウエアの情報を統合的に監視するBIシステムなど各種の新技術を導入し、リスクの低減を試みているという。「最近はハッキングなど企業に対する攻撃が深刻化しており、リスクをゼロにするのは難しい。だからといってITの活用をやめるわけにはいかない。『Protect to Enable(可能にするために保護する)』という戦略の下、防御が破られた際の影響を極小化するというモデルで新たなセキュリティ対策を進めている」(富澤情報システム部長)。

業務改革で2400万米ドルをコスト削減

 インテルの全社員数は9万1500人で、うちIT部門の社員は6400人。この人数には工場など事業部門側のIT担当者も含まれるという。

 IT支出の額は社員1人当たり1万5500米ドル。富澤情報システム部長は「日本企業におけるIT支出のレベルはこれの半分、またはそれ以下と言われているが、米国の企業では当社程度の水準が一般的」とコメントする。

 IT部門内では、業務改革手法のリーンシックスシグマ(関連記事)を推進中という。2011年中にはIT部門と事業部門にまたがるビジネスプロセスをリーンシックスシグマで改善した結果、2400万米ドルのコストを削減できたとしている。

 富澤情報システム部長は、異なる企業のIT部門同士で“横連携”することの重要性を訴える。「ITのノウハウを互いに共有することで、ビジネスにおけるITの重要性がより強く認知されるようになる。IT部門同士で情報交換を積極的に行っていきたい」。