写真1●NTTデータ 基盤システム事業本部長 遠藤宏氏
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写真2●デージーネット 代表取締役 恒川裕康氏
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写真3●日立ソリューションズ オープンソース技術開発センタ 吉田行男氏
写真3●日立ソリューションズ オープンソース技術開発センタ 吉田行男氏
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写真4●エンタープライズDB 代表取締役社長 藤田祐治氏
写真4●エンタープライズDB 代表取締役社長 藤田祐治氏
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写真5●LPI-Japan理事長 成井弦氏
写真5●LPI-Japan理事長 成井弦氏
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 Linux関連の技術者認定試験を実施するLPI-Japanは2012年3月16日、パートナー向けイベントにてオープンソースデータベース「PostgreSQL」に関する講演を開催した。PostgreSQLの企業導入や人材育成、サポート、商用データベースからの移行などをテーマに5人が登壇した。

 1人目はNTTデータの基盤システム事業本部長、遠藤宏氏(写真1)が「PostgreSQL導入と人財育成」というテーマで、同社の活動を紹介。この中で、オープンソースソフトウエア(OSS)を企業システムに利用していくために重要な点として、「技術」「人財の確保」「コミュニティーとの共存」の3つを挙げた。技術的な観点からは、可用性や性能などの非機能要件を満たすこととサポートに対する要望が開発現場には高いとする。

 また人材としては、OSSの技術スキルだけではなく、「ITアーキテクト」「ITスペシャリスト」「コンサルタント」といったITスキルも同時に求められていると述べる。同社では人材育成としてOSS技術スキルを必修としつつ、プロジェクト参加による実践的な対応能力向上への取り組みを始めているという。

 2人目は、OSSを使った企業システムの構築・運用を請け負うデージーネットの代表取締役 恒川裕康氏(写真2)。同氏は、同社のOSS導入プロセスなどを紹介。課題となるサポートプロセスでは、ディストリビューションや各種ソフトのサポートを専門ベンダーと協力して体制を組むのが効率的と述べた。OSSのサポートは「商用ソフトとほぼ同じレベルが可能。むしろOSSの方が事例が豊富な点や問題回避が容易な点で有利」とする。ただし、OSSはトラブルの現象再現が難しい点では、相応の対応が必要だとした。

 3人目は、日立ソリューションズでOSSビジネスの新規ビジネスを企画する、オープンソース技術開発センタの吉田行男氏(写真3)が登壇。同社のサービス内容を紹介するなかで、「いま商用データベースの保守費用を削減したいという目的でOSSに移行するユーザーが1つのトレンドになっている」とした。ただ企業システムの要件としては「OSSではできることとできないことがある」と認識しており、この4月にPostgreSQLを企業システムに適用していくためのコンソーシアムを立ち上げる計画を明らかにした。

 4人目は、PostgreSQLを企業ユーザー向けに強化した「PostgreSQL Plus」を開発するエンタープライズDBの代表取締役社長 藤田祐治氏(写真4)が、米国での導入事例を紹介した。1つの試算としてサーバー4台の場合にOracle Databaseと比較し、3年間で83%のTCO(初期コストと年間保守料)削減を実現できるとする。実際、Webを使った人材派遣業の米Aquent社では、人材管理システムを商用データベースからPostgreSQLに移行し、かつAmazon Web Servicesのクラウドサービスに載せ換えて、年間20万ドルのコスト削減を実現したという。また大規模事例として、モバイル広告配信を展開する米InMobi社は、1トランザクションを3ミリ秒、1分当たりの表示が20万件のシステムを、PostgreSQLで運用できていると紹介した。

 最後にLPI-Japan理事長の成井弦氏(写真5)が登壇し、「いまITベンダーも差別化しなければ生き残りが難しい。日本国内のほとんどのベンダーは、Oracleデータベース技術者の認定資格を持つエンジニアがいて、Oracleで構築する技術はある。しかしそれだけでは差別化にはならない。PostgreSQLをはじめとしたオープンソースのデータベース技術者のスペシャリストが差別化の付け方として必要になる」と強調した。