日本マイクロソフトの樋口泰行社長
日本マイクロソフトの樋口泰行社長
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米マイクロソフト インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ・クルトワ氏
米マイクロソフト インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ・クルトワ氏
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総合コーディネーターを勤めた鈴木寛参議院議員
総合コーディネーターを勤めた鈴木寛参議院議員
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パネル協議第1部の様子。左から、石井登志郎衆議院議員、助けあいジャパンの藤代裕之氏、岩手県の菅野義克氏、経済産業省の平本健二氏、文部科学省の伊藤学司氏
パネル協議第1部の様子。左から、石井登志郎衆議院議員、助けあいジャパンの藤代裕之氏、岩手県の菅野義克氏、経済産業省の平本健二氏、文部科学省の伊藤学司氏
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パネル協議第2部の様子。左から、電子情報技術産業協会の長谷川英一氏、福島県社会福祉協議会の斉藤知道氏、岩手県立大学の山本克彦氏、いわてGINGA-NET代表の八重樫綾子氏、前総務省大臣官房秘書課調査官の瀬戸隆一氏
パネル協議第2部の様子。左から、電子情報技術産業協会の長谷川英一氏、福島県社会福祉協議会の斉藤知道氏、岩手県立大学の山本克彦氏、いわてGINGA-NET代表の八重樫綾子氏、前総務省大臣官房秘書課調査官の瀬戸隆一氏
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パネル協議第3部の様子。左から、東日本大震災災害保険医療支援室の上原鳴夫氏、岩手医科大学の秋冨慎司氏、いわてNPO-NETサポートの菊池広人氏
パネル協議第3部の様子。左から、東日本大震災災害保険医療支援室の上原鳴夫氏、岩手医科大学の秋冨慎司氏、いわてNPO-NETサポートの菊池広人氏
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 日本マイクロソフトは2012年3月9日、「震災復興とICT」と題したカンファレンスを開催した。このカンファレンスの目的は、東日本大震災への対応でICTが果たした役割とそこで直面した課題を共有し、次の災害に備える糸口とすること。後半のパネル協議には計13人が参加した。

 実行委員長として登壇した日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「日本マイクロソフトは、政府、自治体、パートナー企業と連携して、クラウドコンピューティングを中心に復興支援に取り組んできた。ネットワークにつながっていることが非常に重要だと改めて分かった。現場で、Excelによる表計算の需要が非常に多かったのも印象的だった。今日の議論が次の震災の備えに対する視座になればよいと思う」とあいさつした。

 基調講演には、米マイクロソフト インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ・クルトワ氏が登壇。同氏によれば、2008年にミャンマーでサイクロンが起こったとき、国際連合人道問題調整事務所がマイクロソフトと連携して「OneResponse」というポータルサイトを開設した。このサイトは2010年のハイチ地震でも生かされ、人道支援団体がシームレスに情報共有するのに役立ったという。また、米国フロリダ州マイアミ市は、ハリケーンによる被害を受けたときに集まる大量の情報を処理するために、クラウドコンピューティングを導入。クラウドであれば、災害が起こったときだけサーバーを柔軟に増強することが可能だからという。

官民の垣根を越えた情報提供

 後半のパネル協議は12団体から代表者が参加し、前文部科学副大臣の鈴木寛参議院議員が総合コーディネーターを務めた。3部構成で行われ、第1部は「行政・情報」がテーマ。助けあいジャパン ボランティアインフォアドバイザーの藤代裕之氏は、ボランティアの募集情報などを掲載するWebサイト「助けあいジャパン」の運営を紹介した。これは、内閣官房の震災ボランティア連携室と連携して立ち上げたもの。学生アルバイトなども活用して9月までに5000件以上のデータを入力した。「官と民の垣根をどう越えるか」と「ソーシャルメディアのリテラシー向上」が今後の課題だという。

 石井登志郎衆議院議員は、阪神・淡路大震災のときに地方自治情報センター(LASDEC)が開発した「被災者支援システム」を紹介。東日本大震災後、このシステムを導入する市町村は39から112にまで増えたという。課題は、「電力の確保」や「自治体が持つ情報のバックアップや共有」が難しいことで、そのためには「国がリーダーシップを取って共通のものを作るべき」(石井氏)と主張した。

 岩手県総務部法務学事課の菅野義克課長は、震災時に岩手県のホームページでミラーサイトを構築した事例を紹介。岩手県庁は、3月13日11時には業務システムがほぼ復旧したが、同日15時30分頃からホームページにアクセスできなかったり、表示が遅れたりする状況が発生した。独自の対策を進めた上で、3月15日23時に日本マイクロソフトの協力によってミラーサイトを構築。3月19日までにトラブルはほぼ解消した。今後は、「集中しても耐えられるようなシステムを構築し、バリアフリーを意識したWebサイトに変えていく」(菅野氏)。

 経済産業省CIO補佐官の平本健二氏は、500以上ある国や自治体の被災地支援制度を一括検索できるWebサイト「復旧・復興支援制度情報」の構築について説明。復興庁や内閣府防災担当、総務省、経済産業省が協力し、2012年1月17日から始めたものだ。「行政の役割は、きちんとした公共情報を二次利用しやすい形態で出していくこと。そうすれば、専門性の高い多様な民間サービスで活用できるのではないか」(平本氏)と語った。

 文部科学省生涯学習政策局社会教育課の伊藤学司課長は、「放射線モニタリング情報」の公開などについて説明。同省は、全国のモニタリングポストの計測データを2011年3月15日から1日4回ずつ公表した。また、日本マイクロソフトの協力で、放射線量をグラフ化するシステムも導入した。文部科学省のWebサイトだけではアクセス集中に耐えられない可能性があるため、ヤフー、WIDEプロジェクト、さくらインターネット、NTTレゾナントでもミラーサイトを公開した。通常、文部科学省のWebサイトは毎日1万数千件のアクセスだが、震災後は最大28万件まで増えたという。また同氏は、学用品の提供など、学びに関する支援の要請と提案をマッチングする「子供の学び支援ポータルサイト」の取り組みについても紹介。このシステムも日本ユニシスなどが3~4日で開発したという。