政府の知的財産戦略本部 コンテンツ強化専門調査会は2012年3月13日、今年度の最終会合となる第8回会合を開催した。前回の会合で委員から「知的財産推進計画2012」骨子に盛り込むべき事項についての要望が出たことを踏まえて、文面が一部変更されたが、大幅な修正はなされなかった。

 主要施策としては、デジタル・ネットワーク社会の基盤整備について「著作権に関する環境整備」と「電子書籍の本格的な流通促進」を、クールジャパンの推進に関しては「海外展開の成功事例の創出」と「インバウンドの推進」を挙げた。これらの施策については、「2012年3月下旬に開催予定の知財本部の会合で報告する方向で調整している」(内閣官房知的財産戦略推進事務局長の近藤賢二氏)という。

<著作権法の見直しなどを求める声が続出>

 事務局説明後の議論では、コンテンツ産業の振興に向けた法整備についての要望が相次いだ。例えば、川上量生氏(ドワンゴ代表取締役会長)は、「国際的な交渉の状況を踏まえつつ著作権制度上の課題について検討を行い、必要な措置を講じる」という項目について意見を述べた。「国際的な交渉の状況を踏まえつつ検討するのは正しいと思うが、一方で最近の裁判で著作権法についての判例が出ている。これらの問題について、日本として戦略的にどう取り組むのか決める必要がある」とした。

 角川グループホールディングス取締役会長の角川歴彦氏は、最初からデジタルで構成されている情報である「ボーンデジタル」のコンテンツについて、「19世紀、20世紀に出来た著作権法で、これらを判断するのは難しい。裁判で偏った判例が出る恐れがある」と懸念を示した。

 これに対し近藤局長は、「重要な指摘をいただいた。著作権法が策定された当時は、今のような状況を想定していなかったと思う」とした。そのうえで、「世の中の変化に対応できる仕組みが重要だと思う」「デジタル時代に著作権法で対応できるものとそうでないものを整理したい。必要なものが第二の著作権法の導入なのかコンテンツ促進法(コンテンツの創造、保護及び活用の促進 に関する法律)改正なのかは分からないが、来年度から議論を進めていきたい」と意欲を見せた。

<「山を登り始めた」と中村会長>

 専門調査会の会長を務める中村伊知哉氏(慶應義塾大学大学院教授)はこれまでの知財本部の取り組みについて、「コンテンツ強化に向けて政府の省庁が一つのテーブルに付いて一つの方向に向かって動き出したのが成果だと感じている」「個人的には日本が世界の知財大国になるのがゴールだと考えている。山登りに例えると1合目や2合目の段階だが、山登りは始まったと感じている」と述べた。

 知的財産推進計画2012は、知財本部での調整を経て、2012年5月から6月ごろに取りまとめられる予定である。