写真●住友電気工業情報システム部の堀正尚氏
写真●住友電気工業情報システム部の堀正尚氏
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 「ユーザー部門のためらいが消え、新規システムの開発がいっそう進むようになった」。住友電気工業情報システム部の堀正尚氏(写真)は2012年3月9日、大阪市で開催されたクラウドコンピューティングの専門展「Cloud Days Osaka 2012」の基調講演で、同社におけるプライベートクラウド構築後の社内の変化を、このように紹介した。

 住友電工は2011年に、基幹業務システムを運用するためのインフラとして、プライベートクラウドを構築した。同社では従来、システムを構築するたびにPCサーバーを購入していた。その結果、「2000年頃は100台強だったサーバー台数が、2010年には850台を越えるようになっていた」(堀氏)。そこで同社は、プライベートクラウドを構築することで、サーバーの集約化によるコスト削減や、全社共通のバックアップシステム構築による可用性向上などを目指すことにした。

 仮想化ソフトには、ヴイエムウェアの「VMware ESX」を採用した。それまで住友電工は、オープンソースソフトウエア(OSS)の「Xen」を使っていた。「Xenは仮想マシンのI/O帯域を制御する機能が乏しく、特定の仮想マシンがI/Oを占拠してしまう恐れがあった。また負荷分散や障害時の切り替え機能なども、VMwareの方が優れていた」(堀氏)ことが決め手だったという。

 住友電工のプライベートクラウドでは、4台の物理サーバーで一つのリソースプールを作り、そこで50台の仮想マシンを運用できるようにする。リソースプールのメモリー容量は300Gバイト、ストレージ容量は20Tバイトだ。「従来の物理サーバーを用意するやり方では、540Gバイトのメモリーと54Tバイトのストレージが必要だった。リソースプールの共用化によって、リソースの利用効率が上がった」(堀氏)。

 同社は2011年以来、三つのリソースプールを投入し、110台の仮想マシンを運用している。「プライベートクラウド導入後は、ユーザー部門の要請から2~3日以内に仮想マシンを用意できるようになった。物理サーバーは、調達に1カ月かかったので、時間を大きく短縮できた」(堀氏)。また、PCサーバーの内蔵ディスクではなく、リソースプールに用意した高性能なストレージ装置を使用するようになったため、アプリケーションの処理性能も向上したという。コストも、物理サーバーを使用するのに比べて、30%削減できた。

 同社が運用する物理サーバーの台数は、プライベートクラウド構築後も変わっていない。これは、プライベートクラウドは新規システムで使用しており、既存サーバーの移行をまだ進めていないためだ。それでも住友電工の堀氏は、「物理サーバーが増えていないことが成果」と語る。「これまでは、PCサーバーの導入にコストがかかるため、ユーザー部門がシステム化をためらっている傾向があった。プライベートクラウドの構築によって、ためらっていたシステム化が進んだ」(堀氏)としている。