写真1●イスラエルのアミモンのマーケティング&セールス副社長のデビッド・シェフラー氏
写真1●イスラエルのアミモンのマーケティング&セールス副社長のデビッド・シェフラー氏
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写真2●タブレット端末に表示した映像をリアルタイムでテレビに無線送信できる
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 「WHDI(wireless home digital interface)」は、イスラエルのアミモンが開発した映像データを送信するための無線方式。送信には5GHz帯の電波を使う。規格を策定するWHDIコンソーシアムには、韓国LG電子、韓国サムスン電子、シャープ、ソニー、日立製作所、米モトローラなど家電メーカーが参加している。対応機器は既に登場しているが、今後ユーザーにどう浸透していくのか。モバイル関連の展示会「Mobile World Congress 2012」の会場でアミモンのマーケティング&セールス副社長のデビッド・シェフラー氏に聞いた。

ほかの無線方式と比べてWHDIにはどんな特徴があるか。

 WHDIの主な用途は、パソコンやタブレット端末に表示している内容をそのままテレビに表示するというものです。例えば、家族で写真を見るときにテレビの大きな画面に表示したほうが楽しめるでしょう。ビジネス用途で会議に使うことも考えられます。

 WDMIの特徴は低遅延であること。パソコンやタブレット端末に加えた操作がテレビ側に即座に伝わるので快適に操作できます。遅延の値は1ms以下です。レスポンスは使い勝手を決める最も重要な要素です。フォルダーを開くといった操作でもレスポンスが悪ければストレスが溜まるものです。もちろん、ゲームを楽しむためにはレスポンスが悪くては話になりません。

対応製品はどのようなものが登場しているか。

 まずはテレビのアダプターが世界各国で発売されています。テレビにアダプターを接続すれば、WHDIに対応した機器からの映像を無線で受信できます。周囲にWHDIに対応した機器が複数ある場合でもリモコンを使って切り替えできるようになっています。日本でもアイ・オー・データ機器がアダプターを発売しています。最近では2012年1月の展示会「CES」で中国レノボがWHDIの出力に対応したタブレット端末を発表しました。

新方式のIEEE802.11acなど無線LANと比べて優位性があるのか。

 WHDIは無線LANとは異なり、大量のデータを送信するための規格ではありません。映像を途切れることなく、低遅延で送るための規格です。1080p/60Hzの映像を送るためには、計算上は3Gbpsが必要ですが、実際にはその速度で送信しているわけではありません。

 無線LANで動画を送信する際、電波状況が悪くなると映像が止まってしまいます。WHDIでは電波状態が変化すると目立たない部分の画質は劣化するものの、可能な限り途切れずに再生できる仕組みになっています。もう少し詳しく言うと、JSCC(joint source-channel coding)と呼ばれる方式で画像を変換し、アナログ送信に似たデータの流れを作っています。

従来はソニーがWHDIに対応したテレビを投入していたが、現在は取りやめている。

 ソニーは2008年からWHDI対応のテレビを数機種投入していました。パネルを薄型にして、それ以外のチューナーなどの部品を別ユニットに分離した製品です。パネルとユニットの間をWHDIで無線通信するという製品でした。ただ、このコンセプトは市場に受け入れられませんでした。価格が高く、コスト競争が続く中で消費者に受け入れられなかったことが要因でしょう。

 最近ではテレビにパソコンの機能を取り込んだスマートTVというコンセプトも登場していますが、こちらも受け入れられることは難しいでしょう。テレビはパソコンと異なり、買い替えサイクルが遅いので7~8年も経つと機能が陳腐化してしまうからです。そう考えると、テレビはパソコンやタブレット端末の映像を受信するための機能に特化するべきでしょう。

今後の展開は。

 WHDIが目指しているのは「全ての映像出力を、全ての表示機器に無線で出力すること」です。テレビ用のアダプターだけでなく、会議に使うプロジェクターにもWHDIを組み込んでいきたいと考えています。

 パソコンやタブレット端末の映像をテレビに送るための製品が今後ますます増えていくでしょう。今後は制御チップの統合や小型化も進めていきます。通信モジュールの小型化が実現できれば、スマートフォンへの搭載も実現できます。