高速性やデザイン性の高さをうたった大手メーカー製のスマートフォンやタブレットだけでなく、Mobile World Congress(MWC) 2012ではマーケットの広がりを感じさせる新たなカテゴリーのスマートフォンの展示も見られた。スマートフォンはさらなる多様化の道を歩みそうだ。
主に欧州市場をターゲットにしたスウェーデンのDoroは、特定のユーザー層に絞ったスマートフォンを展示していた。同社が展示していた「Doro PhoneEasy 740」(写真1)は、今夏発売予定のキーボード付きのスライド式スマートフォン。これ自体、日本では珍しくはないが、同社は「senior mobile users」、つまり高齢者をターゲットにしているのだ。
展示している製品はモックアップだったが、Doroが開発した独自のユーザーインタフェース「The Doro Experience」をAndroid上に載せることで、アイコンが大きく高齢者でも操作しやすいインタフェースを実現しているという(写真2)。同社担当者によると「日本の富士通も同じコンセプトの製品を出しているのを知っている」。さしずめAndroid版“らくらくフォン”といった趣だ。The Doro Experienceはサードパーティーにもライセンス提供する。
変わり種という点では、中国のChina Mobile Internet Technologiesが披露していた「TransPhone」が目を引いた(写真3)。2011年5月に公開された製品だが、発売はこれから。同社PresidentのFrank Zhou氏によると、2カ月以内に市場に出るという。この製品の特徴はスマートフォンをタブレット端末としても使えるように専用のタッチパネル付きディスプレイを用意している点だ。
写真4のように一見タブレット端末のようなタッチパネルディスプレイの背面にスマートフォンを差し込んで一体化。するとスマートフォンをタブレット端末のような大きさで使えるようになる。タブレット端末の状態で使っているときに電話がかかってきた際は、そのまま背面からスマートフォンを引き抜いて電話を受けられる。
大手メーカーも変わり種のスマートフォンを出している。韓国サムスン電子はプロジェクター付きAndroid搭載スマートフォン「Galaxy Beam」(写真5)を会場内に暗所を設けてデモ。明るさは15ルーメンで最大50インチの映像を投影できる。
フィンランド ノキアはWindows Phoneの新製品(関連記事)などと併せて、約4100万画素という高画素のカメラ機能を搭載した「Nokia PureView 808」を発表した(写真6)。搭載するセンサーは1/1.2インチ、OSはSymbian OSである。「PureView imaging technology」と呼ぶ技術を搭載しており、発表会では撮影した写真の拡大画像に写っているサングラスの写り込みまではっきり見えることを示すデモを実施した。
スマートフォンはもはや普及期から次の段階に移りつつあり、大手メーカーだけでなく、新興メーカーも続々と個性的な製品を市場に投入しようとしている。ITproではこうしたトレンドを含め、Mobile World Congress 2012報告として3月12日から特集記事を掲載する予定である。