モバイルトラフィック急増対策の一つとして注目を集めているのが「HetNet(Heterogeneous Network)」と呼ばれる技術。通常の基地局がカバーするマクロセルにオーバーレイする形でピコセルやフェムトセルといった狭い範囲をカバーする基地局を配置し、両者が協調することでネットワーク全体のキャパシティーを改善できる技術である。3GPPリリース10にて標準化された(関連記事)。
米クアルコムは、同社の本社がある米国サンディエゴにて実施しているHetNetのデモを、スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2012」の会場内にてライブ中継にて紹介している(写真1)。
デモは、2つのマクロセルの中に3つのピコセルを配置し、その中に6個の端末が存在する構成で実施(写真2)。その内の一つの端末は車内に設置し、バルセロナの会場内とSkypeを通じてビデオ中継されている。
HetNetは、マクロセルの中にピコセルなどをオーバーレイして配置するため、そのままでは干渉してしまう。HetNetでは、主に、あるタイムスロットごとにマクロセルが送出する電波を止めて、マクロセルが止めたタイムスロットをピコセルが使う形で干渉を抑制する。これによってピコセルから離れた端末も、あたかもピコセルのエリアが広がるかのようにマクロセルからピコセルに収容され(写真3)、全体のキャパシティーを向上できる。クアルコムではこれを「レンジエクスパンション」と呼んでいる。
デモではレンジエクスパンションした場合、ネットワーク全体の容量が2~3倍になる様子を見せた(写真4)。
HetNetの紹介は、昨年のMWCでも目立っていたが(関連記事)、実地デモのフェーズに入ったことで、商用化に向けて着々と進歩していることがうかがえる。