写真●NEC 執行役員常務の山元正人氏(写真:中根 祥文)
写真●NEC 執行役員常務の山元正人氏(写真:中根 祥文)
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 「利用可能なデータの量は爆発的に増えている。問題はどうやって分析するかだ」――。NEC 執行役員常務の山元正人氏(写真)は2012年2月29日、クラウドコンピューティングの専門展示会「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」の講演で、ビッグデータ活用の課題をこう指摘した。その上で「ビッグデータを活用するには新しいデータベースソフトが必要である」(山元氏)と訴えた。

 山元氏は「大量発生データを連続処理するデータベースソフトとして、6年前から『InfoFrame Table Access Method』を提供してきた」という。これは、データをすべてメインメモリー上に展開することによってアクセスを高速化した製品である。ただしメインメモリーを利用する分、データ量のスケーラビリティは制限される。

 そこでNECは2012年4月をメドに、北米と国内の拠点で共同開発してきた「InfoFrame Relational Store」という新しいデータベースソフトをリリースする。山元氏は「RDBとKVS(Key Value Store)のメリットを併せ持つ新しいデータベースソフトだ」と訴求した。SQLという従来技術に対応しつつ、スケーラビリティ、トランザクション処理、信頼性を兼ね備えるという。

3層アーキテクチャーを備える

 RDBとKVSのメリットを併せ持たせるために、InfoFrame Relational Storeは独自の3層アーキテクチャーになっている。最下位層はKVSで、データはこのKVSに収容する。つまり本質的にはKVSのデータベースソフトである。ただし単なるKVSでは、SQLの命令文を受け付けられないし、トランザクション処理もできない。

 そこで、最上位層にSQLの命令文をKVS向けに変換する「データアクセス処理」の機能を、中間層にはトランザクション処理の機能を配置した。最上位層のデータアクセス処理、中間層のトランザクション処理、最下位層のKVSはそれぞれ独立したUNIXサーバー(OSはRed Hat Enterprise Linux 5)で稼働し、スケールアウトさせる。最上位層のデータアクセス処理がボトルネックになれば、この層のサーバーだけをスケールアウトさせればよい。

 この3層アーキテクチャーにより、システムのスモールスタートが可能になる。山元氏は「システム導入時の初期コストは既存のデータベースの50%で済む」と強調した。加えてSQLに対応しているので、既存のIT資産を生かしやすいという利点もある。山元氏はNECビッグローブが提供してきた画像管理サービスにおいて、InfoFrame Relational Storeを導入しシステムを再構築した事例を挙げ、「アプリケーションプログラムの流用率は99%に上った」と胸を張った。

 さらに山元氏は「現状のビッグデータ活用は大半が企業内にとどまっている」と指摘。「今後は、企業間でビッグデータを活用することが大きな価値を生む」(山元氏)と主張した。