写真●日本ユニシス、ICTサービス事業部U-Cloudサービス企画部マーケティングプロジェクトリーダーの森駿氏(写真:中根 祥文)
写真●日本ユニシス、ICTサービス事業部U-Cloudサービス企画部マーケティングプロジェクトリーダーの森駿氏(写真:中根 祥文)
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 「クラウドの活用方法には、5個の勝ちパターンがある」。日本ユニシスでクラウドサービス部門のマーケティングを担当する森駿氏(写真)は2012年2月29日、クラウドコンピューティング専門展「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」で講演。同社が手がけたユーザー事例から見えてきたクラウド活用ノウハウを解説した。

 森氏が講演全体を通じて示したクラウド活用法「5個の勝ちパターン」とは、(1)「IT基盤を短期間だけ利用する」という経営課題には「従量課金」が有効、(2)「情報システム部門の要員不足」という課題には「アウトソーシング」が有効、(3)「早期に稼働させなければならない」という課題には「SaaS型開発パッケージ」が有効、(4)「海外拠点に資源が分散」という課題には「クラウド上でのシステム統合」が有効、(5)「災害対策」という課題には「クラウドへのデータ保存」が有効--というもの。

企業が抱える経営課題はクラウドが解決する

 森氏は、講演の冒頭で、円高や景気悪化など、現在の企業を取り巻く社会情勢に言及。経営課題のキーワードがここ数年で変化し、売上向上やコスト削減などの基本事項に加えて、新たにグローバル化や新規事業などの優先度が高まっている点を指摘した。こうした要件に対する解決策として「クラウドへの期待が高まっている」(森氏)と説明する。

 実際にクラウドの導入は進んでおり、適用範囲も広がっている。森氏は、「クラウドの有効性は実績が証明している」と強調。同社が手がけたユーザー事例の件数は、2009年から2010年の1年間で1.9倍に、2010年から2011年の1年間で2.7倍に増加した。適用範囲は、同社のユーザー事例だけで「ユーザー企業の業務範囲の全体をカバーしている」(森氏)という。

 クラウドの価値(ユーザーがクラウドに期待すること)も、時代とともに変遷してきた。森氏によれば、2008年頃にユーザーが期待していたことはコスト削減だった。それが、ここ1~2年でスピード経営を支える俊敏性に注目が集まり、さらに事業継続の観点から堅牢性への期待も高まった。今後は、ビッグデータの情報活用に使われるという。

短期、早期、分散などの経営課題をクラウドが解決

 森氏は、同社が手がけた事例から「クラウドの活用方法として、5つの勝ちパターンが見えてきた」と説明し、個々の勝ちパターンについて具体的に事例を紹介した。

 (1)「IT基盤の短期利用」の課題を解決した事例が、電気自動車の充電インフラシステム「smart oasis」の実証実験である。実験期間が3カ月間という短期間だったので、月額制の従量課金でIaaSを利用し、3カ月間だけ利用した。これにより、コストを最適化できた。

 (2)「情報システム部門の要員不足」の課題を解決した事例が、インターネット上で提供するeラーニングシステムである。従来はコロケーション(ハウジング)を利用していたが、情報システム要員が一人しかおらず、運用負荷が重かった。これをクラウドサービスに移行した。クラウドには運用サービス(監視、サービスデスク)が付随するので、運用をアウトソーシングできるというわけだ。

 (3)「早期稼働」の課題を解決した事例が、本間ゴルフの顧客サービスシステムである。新商品の発売日が3カ月後に決定している状況下で、新商品の顧客待遇のために新システムを用意する、という案件である。SaaS型のアプリケーション開発基盤を利用し、画面や機能に関する2回の打ち合わせを経て、1.5カ月でシステムを開発した。

 (4)「海外拠点」の課題を解決した事例が、大規模メールシステムを再構築した例である。このユーザー企業はExchange Serverを利用しており、拠点が増えるごとにサーバーを立てて拠点ごとに運用してきた。このため、運用負荷が重く、企業全体を通したポリシーの統制もできていなかった。これをクラウドサービス型の全社統一型のメールシステムに切り替えた。

 (5)課題「災害対策」を解決した事例が、データ保管/ファイル共有システムを再構築した例である。このユーザー企業は、事業拡大のためにM&Aを繰り返しており、グループ会社が増えるごとにデータが分散される状態となっていた。このままでは、災害時などにデータが欠損してしまう。これを解決するために、データをクラウドサービス側で一極集中管理/保存するようにした。クラウドにデータを保存することで、データのバックアップもできるようになった。

専用インフラへの投資をインターネットで代替

 森氏は、講演の最後に、日本ユニシスが手がけた最近の興味深い事例をいくつか紹介した。

 一つは「クラウド型のタクシー配車システム」である。タクシー業界では2016年に既存のアナログ無線からデジタル無線へと切り替わるという。一方、タクシーごとに無線機を置き換えると、コストが高くついてしまう。これを、インターネット接続とクラウドサービスで解決する。タクシーにはタブレットを配置する。

 もう一つは、佐賀県の救急医療システムである。病院側が患者を受け入れ可能かどうかを、救急車と病院とで、リアルタイムに共有する。これにより、患者の搬送時間を短縮できる。救急車にはタブレット(iPad)を配置する。救急車の中では、ノートPCでは大き過ぎで、スマートフォンでは小さ過ぎるからである。