写真●講演に登壇した日立製作所の高橋明男氏
写真●講演に登壇した日立製作所の高橋明男氏
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 「クラウドはこれから発展期に入る。クラウド事業をビッグデータの利活用にまで拡充し、スマートな社会を目指していく」――。2012年2月28日に開幕した「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」の講演に登壇した日立製作所の高橋明男氏(情報・通信システム社 クラウド事業統括本部 担当本部長、写真)は、同社がクラウドやビッグデータの利活用によって目指す社会について解説した。

 同社は、企業情報システム構築で蓄積したノウハウを基にして、「安全・安心」「スピード・柔軟」「協創」に重点を置いたクラウドサービスを「Harmonious Cloud(ハーモニアスクラウド)」というブランドで展開している。講演の前半では、同社のこれまでのクラウドへの取り組みを、ニーズの変化とユーザー企業の導入事例を通して解説した。

 同社が現在、高いクラウドのニーズとして挙げるのは「基幹業務」「事業継続」である。例えば、クラウドに関する顧客からの問い合わせの中で、基幹業務に関するものが、2011年度は全体の14%と2010年度の6%から大幅に増えた。事業継続については、2010年度がほとんどなかったのに対して、2011年度は23%を占めるようになっている。

 講演では基幹業務システム向けにクラウドを適用した事例として、日本たばこ産業(JT)のプライベートクラウドを挙げた。従来、JTの各部門が個別に構築・運用していた業務システムのITインフラを、仮想化技術で統合してサービスとして日立製作所が提供している。JTはインフラ運用・保守の一元管理などの効果を得ている。

 事業継続対策の適用例としては、千葉大学を挙げた。災害・停電時の情報提供が可能なようにHarmonious Cloudセンタにミラーサイトを構築して、システム全体の冗長化を実現。被災時も学生などに情報を提供できるようにした。

 講演の後半では、クラウドおよびビッグデータ利活用と同社が目指すスマートな社会について説明した。

 同社は2012年度からクラウドが発展期に入ると位置づける。発展期では、クラウドの新分野・社内インフラへの展開が始まる。そこでカギになるのがビッグデータの利活用である。ビッグデータの利活用にはクラウドが有効で、大量データの蓄積・管理および高速処理の基盤として使うことで、新たなサービスの創出が可能になるとした。

 具体的には、クラウド事業をビッグデータ利活用/スマートインフラへ拡充することで新たなサービスを創出し、スマートな社会の実現を目指す。

 既に、同社はビッグデータ利活用事業をいくつか開始している。例えば、火力発電所で使うガスタービン保全システムでは、タービン1台当たり200~2000のセンターからデータを常時収集。世界中のガスタービンの稼働状況を衛星通信を通して、Harmonious Cloudセンタで一括管理することで、予防保守に生かしている。ほかにも農場のセンサーからデータを収集・蓄積して、農産物の育成状況などとの関連を分析することで生産性を上げる取り組みなどがある。ビッグデータ利活用では、ユーザーの専門的な知見/経験と日立のITが組み合わせることで、新しいビジネスが創出されているという。

 スマートインフラへの拡充では、社会基盤システムのスマート化について、コンサルティングから運用までを行っている。こちらも実績がいくつか出始めている。例えば、沖縄県では、EV(電気自動車)の充電ステーション管理システムをクラウド上に構築して提供している。利用者の増加や充電器の増設の際にもクラウドの特性を生かして柔軟に対応できるという。

 今回講演に登壇した高橋氏は、2011年にJ1に昇格した柏レイソルの黄色いユニフォームを着用していた。Harmonious Cloudをさらに飛躍させることや、日立製作所という会社がクラウドという新しい事業によって変化していることをアピールすることを狙ったという。