写真●エムオーテックスの高橋慎介社長(写真:中根 祥文)
写真●エムオーテックスの高橋慎介社長(写真:中根 祥文)
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 「これからのネットワークセキュリティおよび資産管理ツールは、従来のパソコンを中心としたIT機器の管理に加えて、従業員一人ひとりの勤務時間中の行動を、その意味まで含めてすべて記録および分析できる“行動管理”への対応が求められるようになる」――。

 2012年2月28日と29日の2日間、三つの専門展示会およびセミナーの統合イベント「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」が東京で開催されている。セッションに登壇したエムオーテックスの高橋慎介社長は「クラウド時代の企業戦略はスマートデバイスの可視化で勝つ」と題して、スマートフォンやタブレット端末の本格導入時代に向けて、企業が取るべき戦略などについて講演した。

 高橋社長はまず、企業ネットワークの管理に関する現状の課題を紹介するところから話を始めた。「すべての企業にとって、ネットワークは本来生産性をアップさせるために導入したものであったはず。ところが、ネットワークを使いにくくする“誤ったセキュリティ対策”を導入した結果、思ったほど生産性を高められずに投資が無駄になっているだけでなく、従業員のモチベーション低下まで招いているようなケースまで出ている」。

 高橋氏によれば、本来の使い勝手を極力生かしたまま、導入目的以外の使い方をしないようにうまく監視や制御をするのが正しいセキュリティの役割であり、制約だらけで使いにくくするのは間違いであるという。「あたかも脳がすべての神経系に流れる情報を集めて管理しているように、常に状況を集中モニタリングしてユーザーが正しい行動のみを取れるようネットワークを円滑に管理できるようにするのが理想だ」。

 セキュリティと利便性のバランスをどううまく取ればよいかはセキュリティに関わるすべての人を悩ませる永遠のテーマだが、高橋社長は具体例として企業におけるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の活用を挙げた。「大手企業で社内からFacebookへのアクセスを正式に認めている企業はほとんどないと聞いている。しかし、正しく使えばFacebookはとても役立つ。例えば営業担当者にとって、Facebookで事前に訪問予定顧客の詳細な情報を得るといった使い方はとても有効な武器となる。事業目的に合った使い方をしているかをきちんとモニターすればよいだけであり、必ずしも禁止する必要はないはずだ」。

行動監視が正当な人事評価に役立つケースも

 次に高橋氏は、同氏がネットワークセキュリティおよびIT資産管理ツールに求められている“次の一手”と位置付けている「行動管理」の重要性について説明した。高橋氏によれば、従来のツールは従業員一人に1台のパソコンがあることを前提に、そのパソコンを使ってどのような作業をしたかを監視したり記録したりすることが管理の中心になっていたという。

 しかし、スマートフォンやタブレット端末の普及によってこうした状況は様変わりしつつある。「今ではスマートフォンやタブレット端末を含め、一人で複数台の端末を使うのが当たり前になりつつある。こういう状況ではもはや今まで通りの管理手法は通用しない。パソコンの中でどういう行動を取ったかだけでなく、そのユーザーが場所を移動したり利用するデバイスを切り替えたりしても、継続的に行動を追跡し、監視および記録できるツールが必要になる」。

 具体的に、エムオーテックスが今春に発売を予定している二つの新製品「LanScope Cat7」(2012年4月予定)と「LanScope An」(同5月予定)では、そうした行動管理が実現可能になるという。例えばAndroidスマートフォン向けのツールであるLanScope Anの場合、従業員の行動をGPSを使って地図上で追跡できるのに加え、移動中に使ったアプリの種類やWebページのアクセス履歴などもすべてログに記録できる。「顧客に会うために移動しているときに、Facebookを使ってその顧客がどんな趣味を持っているかを調べていたといった行動まで分かる」(高橋氏)。

 ここまで徹底的に従業員の行動を監視・記録するツールを導入しようとすれば、当然、反発を招くケースも出てくるだろうと高橋氏自身も予測している。実際、同社では3月からAndroidスマートフォンを一括導入し、同ツールを導入した状態で持たせて行動監視を実施する予定だというが、「自分たちで開発しておきながら、その開発部隊の人間が行動監視されるのを最初はかなり嫌がっていた」(高橋氏)。

 しかし、多くの人が最初はこうしたツールを導入するのに抵抗があるのは当然だとしても、その後も抵抗感や嫌悪感が継続するかどうかは、ひとえにその企業と従業員との間の信頼関係にかかっていると高橋氏は主張する。「行動監視によって、例えば誰が作った文書が最も多く社内で活用されているのかといった情報が得られる。営業部門のように売り上げなど分かりやすい数字で評価してもらえない職種の人にとっては、正しい人事評価をしてもらうための手段として行動監視が歓迎される可能性がある」。

 IT投資の費用対効果を可視化するうえでも、行動監視は大いに役に立つと高橋氏はアピールする。「例えばスマートフォンをいくつか先行導入して従業員に持たせ、行動監視をすることによりスマートフォンが本当に活用されそうかどうかを予測分析することができる。多くの人が通話機能しか使っていなければ、スマートフォンではなく携帯電話を導入すれば十分だという結論になる」。