写真●シスコシステムズの吉野正則 クラウドビジネス事業推進執行役員
写真●シスコシステムズの吉野正則 クラウドビジネス事業推進執行役員
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 「ネットワークとコンピュータを融合したシステムが求められている」。シスコシステムズの吉野正則 クラウドビジネス事業推進執行役員はクラウド時代のネットワークのあり方を強調した。2月28日から29日に開催中の「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」で、「The World of Many Cloud--シスコのクラウド戦略--」と題した講演を行った。

 「シスコはスタンフォード大学にコンピュータネットワークを構築する学内プロジェクトから生まれた。そのプロジェクトのコンピュータ側からはサン・マイクロシステムズ(現オラクル)が生まれた。その後二十数年、ネットワークとコンピュータは分かれて進化してきたが、クラウドで流れが変わりつつある」(吉野執行役員)という。クラウドは巨大なITリソースをネットワークを介して様々なユーザーが利用する形態だからだ。

 クラウドの台頭で働き方も変化していると指摘する。「かつては一つのタスクに腰を据えて取り組むことが多かったが、最近はタスクフォースなどの形で本来業務以外の業務も重なってくる」(吉野執行役員)。協業相手も海外支社の社員やパートナー企業が増えてきた。「いかに迅速にタスクフォースを立ち上げ、距離を感じずに働けるかという配慮が必要になる」(吉野執行役員)。そこで役に立つのがクラウドだとする。

 働き方を変えるシスコのソリューションとして、コラボレーション基盤構築サービス「HCS」(Hosted Collaboration Solution)、仮想デスクトップソリューション「VXI」(Virtual eXperience Infrastructure)などを紹介した。HCSはクラウド環境でビデオや音声、チャットなどを提供する。通信事業者向けに提供するほか、プライベートクラウドでも活用できるという。VXIは従来のVDI(仮想デスクトップ環境)に、ビデオ、音声、モビリティーを付加したもの。タブレット端末「Cius」を中心に構成する。

データセンターの要件が厳しくなる

 吉野執行役員は現在のITを変化させる駆動力として、「クラウドの登場」「データの増大」「デバイスの多様化」を挙げた。これらの3者は独立の事象ではなく、デバイスの多様化がデータの増大を引き起こしたり、クラウドによる集約がデータの増大をもたらしたりする。こうした変化によって、システムのあり方は変化していくという。

 シスコは世界のデータセンターを分析して、「クラウドインデックス」と呼ぶレポートをまとめた。「データセンターの実データの解析、学術機関の研究を合わせて2015年までの予想を発表した」(吉野執行役員)というものだ。

 クラウドインデックスによると、2015年にトラフィックは4.8Z(ゼタ:10の21乗で1テラの10億倍)バイトになる。2010年は1.1Zバイトだった。年平均33%のペースで伸びるという予想だ。トラフィックが流れる場所は全体の76~77%がデータセンター内となる。「データセンターの構築にあたっては、どうやってキャパシティーを確保して、かつ成長可能なものにするかが重要になる」(吉野執行役員)。

 こうしたデータセンターを構築するソリューションとして、ブレードサーバー「UCS」(Unified Computing System)、データセンター向けスイッチ「Nexus」、それらを統合するオーケストレーションツールを用意しているとアピールした。加えて、ネットワークが持つ情報を利用してネットワークを快適に保つ「クラウドインテリジェントネットワーク」を紹介した。トラフィックや遅延などをの情報をオーケストレーションツールにフィードバックして、必要な措置を自動的に実施するソリューションである。「CSR」「ASR」「ISR」といったルーターを中心に機能を提供する。

 こうしたソリューションを提供するうえで、シスコはエコパートナーとの関係を重視すると強調した。「我々の製品ポートフォリオは幅広いので、1社で囲い込もうとしているように思われてしまう。しかし、クラウドに必要な要素は我々のポートフォリオよりもずっと広い。色々な会社と一緒にソリューションを提供する」(吉野執行役員)とした。