写真●米セールスフォース・ドットコムのブルース・リチャードソン SVP チーフ・エンタープライズ・ストラテジスト
写真●米セールスフォース・ドットコムのブルース・リチャードソン SVP チーフ・エンタープライズ・ストラテジスト
[画像のクリックで拡大表示]

 「先日、日本のジャーナリストに『日本企業の文化はソーシャルネットワークにはなじまないのではないか』と言われた。だが先進的な日本企業は今や、“ソーシャルエンタープライズ”へと着実に変わりつつある」。米セールスフォース・ドットコムでSVP チーフ・エンタープライズ・ストラテジストを務めるブルース・リチャードソン氏はこう語る。リチャードソン氏は2012年2月28日~29日に開催中の「Cloud Days Tokyo/スマートフォン&タブレット/ビッグデータEXPO」のキーノートスピーチで、ソーシャルエンタープライズへと変化しつつある日本企業の動向を紹介した。

 ソーシャルエンタープライズとは、同社が掲げる企業のIT活用コンセプト。企業向けのクラウドサービス、SNSなどのソーシャルメディア、スマートフォンなどのモバイルデバイスを組み合わせて活用し機動的な企業活動を実現すること、およびそれを実現した企業組織の姿を指す。

 リチャードソン氏が日本におけるソーシャルエンタープライズの実践例として挙げたのは、大正時代に三井財閥の別荘として始まった老舗旅館の元湯陣屋。セールスフォースの各種アプリケーションやSNSを活用することで、「顧客サービスを向上させることに成功した」(リチャードソン氏)。

 活用しているアプリケーションの一つが顧客管理である。部屋の予約状況と宿泊客の顧客情報を一元管理。旅館のスタッフがそれらの情報をPCやiPadなどのスマートデバイス上で随時確認できるようになったため、接客の品質が向上したという。

 加えて元湯陣屋ではセールスフォースの企業向けミニブログサービス「Chatter」を導入し、「従業員のソーシャル化」も実現した。従業員はスマートデバイスからChatterを通じて部屋の清掃状況や宿泊客の要望を情報交換。「従業員をChatterでつなぐことにより、即応性の高い接客対応が実現できるようになった」(リチャードソン氏)。

 宿泊者自身がオープンなソーシャルメディア上で公開している情報も活用している。宿泊客がFacebook上でコメントした旅館の感想を、セールスフォースのアプリケーションを通じて収集。これを顧客情報と結びつけて管理し、接客サービスの改善活動に役立てているという。

 リチャードソン氏はほかにもトヨタ自動車、キヤノン、アシックス、パナソニックなど、日本の大手企業におけるセールスフォース製品の活用事例を紹介。日本において企業のソーシャル化が進んでいることを繰り返し強調した。