2012年2月23日、KVHは国内初の「10ギガビットイーサネット専用線暗号化サービス」を開始すると発表した。高度な機密性を求める金融機関などの顧客に向け、国内最高水準の低遅延な暗号化伝送ソリューションを提供する。サービス開始は3月1日の予定。価格は伝送距離などによって異なるため個別見積もり。

 同サービスは、10Gビット/秒のイーサネット専用線サービスとデータ暗号化機能をワンセットにしたもの。暗号化には、米シエナコーポレーションの光伝送装置「シエナ 5000 Advanced Services Family」を利用する。同装置に暗号化機能を備えたモジュールを装着してユーザー宅内に設置することで、サービスが利用できる状態になる。

 暗号化のみに特化したネットワークを構築する必要がないので、初期投資を削減できる。KVH マーケティング本部マーケティング・コミュニケーショングループ部長の成川良輔氏によると、「既に金融機関数社とデータセンター事業者1社から引き合いがきている」という。

 MAC(Media Access Control)フレームを丸ごと暗号化して、10Gビット/秒のOTN(Optical Transport Network)フレームのペイロードとして送受信する。MACフレームに入るプロトコルのデータであれば暗号化できる。WDM(波長分割多重)ネットワーク上でデータの暗号化処理を直接行うため、ネットワーク層よりも上のレイヤーに影響を与えない。

 暗号化機能はAES-256を用いる。同社システム&テクノロジー本部サービス・ストラテジー&デザイン部エキスパートの中島英規氏は、「現時点ではサービス品目にはないが、伝送装置自体はファイバーチャネルにも適用できる性能を持っている」という。

 また、「従来の暗号化伝送では、ユーザー企業が拠点内に(伝送装置とは別に)データ暗号化用アプライアンスを設置してオペレーションすることがほとんどだったため、ネットワーク機器の点数が多くなり、運用負荷が増えてしまっていた」(中島氏)という。今回のサービスでは、暗号化機能を備えた光伝送装置も回線部分も、KVHが一括して監視・保守を行う。

 KVHは2011年7月に10Gビットイーサネットデータ伝送の暗号化実験が成功したことを発表しており、今回のサービスはそれを商用化したものである。