写真●「千鳥」を使ったグラフィックス例
写真●「千鳥」を使ったグラフィックス例
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 ゲーム制作やゲームツール開発を手がけるプレミアムエージェンシーは、これまで有償で提供してきたゲーム開発者向け3D描画エンジン「千鳥(ちどり)」のAndroid版とWindows版を、2月22日から、無償で一般に公開した(写真)。

 同時に、iOS版やニンテンドーWii版、プレイステーション2版、同3版、Xbox 360版、プレイステーションポータブル版、プレイステーションVita版の「千鳥」についても、これまでの料金体系を改め、より低コストで導入できるようにした()。

表●「千鳥」の対応プラットフォームとライセンス価格
製品名対象プラットフォーム個人向け ライセンス価格(円)法人向け ライセンス価格(円)
Windows版Windows(32bit/64bit)無料無料
Android版Android (Tegra3最適化済)無料無料
iOS版iOS1万円30万円
ビデオゲーム・コンソール版プレイステーション2、プレイステーション3、Xbox360、ニンテンドーWii問い合わせ
ビデオゲーム・ハンドヘルド版プレイステーションVita、プレイステーションポータブル問い合わせ
オールプラットフォーム版すべて問い合わせ

 「千鳥」は2006年に開発された3次元CG描画システムで、主に3Dグラフィックスを使用したゲーム開発時に利用する。同システムをゲームの中に組み込むことで、3D表現や各種映像特殊効果などの描画プログラムをゼロから開発しなくて済む利点がある。

 特に、上記の9つのプラットフォーム上で稼働し、1度のゲーム開発で複数のプラットフォーム向けにゲームを提供しやすくなるのも大きな特徴となっている。ゲームの開発環境としては、米Autodesk製のCGソフト「Maya」や「3ds Max」などで作った3次元モデルデータなどを扱えるほか、米NVIDIAの物理エンジン「PhysX」との親和性も高い。

 ゲーム開発だけではなく、VR(仮想空間)やAR(拡張現実)などの商用システムにも組み込めるのも特徴。これまでにゲームも含めて40件の利用実績があり、最近では、「NANO DIVER」(タカラトミー)や「Let's Try Bass Fishing FISH ON NEXT」(角川ゲームス)、iPhoneアプリ「デジモ」(インフォバーン)などに組み込まれている。

 プレミアムエージェンシーは、無償版リリース後6カ月で、個人・法人を含めて1000ユーザーの獲得を目指す。「千鳥」専用のFacebookページを開設し、ユーザーコミュニティを醸成する。日本語版だけでなく、英語版や中国語版などのドキュメントを用意し、ユーザーフォーラムやパートナープログラムも同時に作る計画で、全世界レベルでの情報交換の活性化を図りたい考えだ。

 3Dゲームエンジン分野では、「Unreal Engine」シリーズ(米Epic Games社)やUnityシリーズ(米Unity Technologies)などの海外製品を利用するゲーム会社は増えている。同社は国内メーカーという地理的な優位性を軸に、ゲーム開発会社だけではなく、専門学校や大学などの教育機関での利用を働きかけている。また、東南アジアなどの地域で、2008年から同社が提供している教育活動にも「千鳥」を使っており、今後需要が急増するスマートフォン向けアプリ開発などでの利用促進を狙っている。