ソフトバンクテレコムは現地企業と組み、中国本土でクラウドコンピューティング事業に乗り出す。中国データセンター業者大手の万国数据服務(GDSサービシズ、本社:北京市)と組み、サーバーなどIT基盤を貸し出すサービスを2012年5月をメドに提供。香港の新興通信事業者である第一線集団(DYXネット・グループ)と合弁会社も設立し、クラウドと企業拠点をつなぐ回線や関連サービスを、クラウドと一体で提供する。

 中国で提供するクラウドは、米ヴイエムウェアの事業者向け仮想化ソフトをベースにした「VMware vCloud Datacenter Services」。従量制で仮想サーバーなどを貸し出すIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)で、日本では2011年8月から同じサービスを提供している。中国でも日本と同じ機能が手に入る点などを訴求し、まず日系企業の開拓に力を入れる。vCloudを使ったクラウドサービスは日本のほか欧米やシンガポールなどでも提供されているが、中国ではこれが初めて。

 まずGDSの上海にあるデータセンターでサービス基盤を運用する。利用実績に応じた完全従量制の料金体系や、日本と共通のプロビジョニングを導入してサービス提供までの手間を簡素化するなど、日本での事業ノウハウを生かす。許認可上のサービス提供元はGDSとなり、ソフトバンクテレコムは全額出資の中国現地法人を通じてGDSへの技術指導や利用企業を開拓する営業活動を担う。

 一方、香港のDYXネットとは江蘇省蘇州市に合弁会社「SBTM ONLINE」を3月に設立、ソフトバンクグループが資本金の90%を、DYXネットが残りを出資する。DYXネットが中国で提供する通信サービスを、今回のvCloudサービスと組み合わせて販売するなど、vCloudに関連したシステムインテグレーションや保守サービス、顧客開拓などを担う。

 DYXネットは大手通信の回線インフラを活用した通信サービスを主に手がけ、香港のほか中国や台湾、シンガポール、ベトナムなどに進出している。ソフトバンクは中国での通信サービス運営ノウハウや中国電信など通信大手との折衝力などを評価し、DYXネットとの提携を決めたという。

 ソフトバンクテレコムは、韓国でも韓国通信(KT)と合弁でデータセンター事業に乗り出している。今後もクラウドやデータセンターでのホスティングを強化し、アジアに進出する日本企業の取り込みを強化する考えだ。

■変更履歴
第1段落と第3段落で「DGSサービシズ」としていましたが「GDSサービシズ」です。また第1段落、第4段落および第5段落で「DXYネット」としていましたが正しくは「DYXネット」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2012/02/22 12:40]