コンカー日本法人は2012年2月13日、従業員の経費管理を実行するクラウドサービス「Concur Expense」の提供を開始したと発表した。親会社である米コンカーのサービスを日本語化し、SuicaやPASMOとの連携といった日本独自の機能を追加した。同日開催した「コンカークラウドフォーラム2012」で、日本法人の三村真宗社長は「従業員経費は人件費に次ぐ間接費にも関わらず、改革が先送りにされていた。我々のサービスはクラウドやスマートフォンを活用することで、海外子会社を含むグループ全体の経費管理業務の改革に役立つ」と語った。

 Concur Expenseは、経費入力に加えて、入力データの規定違反を防いだり、経費にかかわる全体動向を可視化したりする「経費ガバナンス」を支援するサービス。経費入力に関しては、「手入力をさせないというのが基本的な考え方」(三村社長)。法人カードとデータを連携するほか、法人カードでカバーできない交通費精算を自動化するため、SuicaやPASMOなどFeliCa対応のICカードからデータを経費明細として取り込めるようにした。法人カードについては2月8日に、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルと業務提携すると発表済み。

 さらにICカードを使えない交通費精算に対応するため、ジョルダンの「乗換案内」とも連携できるようにした。経費精算時に経路を探索すると、「最も安い」「最も早い」などの候補を表示。そこから自分が使った経路を選べる。

 三村社長は、「オフィスに戻らないと経費入力や承認の処理ができないのは非効率的」と話す。Concur Expenseはスマートフォンやタブレット端末から、PCと同様に経費入力などを可能にする。領収書についても「経費を入力する従業員と承認するマネジャーが物理的に離れているのは、昨今では珍しくない。紙の領収書を添付せよというのは効率を下げる」(三村社長)ことから、スマートフォンなどのカメラで入力した画像を添付する形にする。

 経費ガバナンスを支援するため、入力データの規定違反を防ぐ機能も備える。「多くの企業では、経費精算に関して“悪意のない規定違反”がよくみられる。規定をうろ覚えの従業員がうっかり規定違反を犯してしまい、マネジャーがそのまま通してしまう。結果的に、経理部門の担当者が伝票のチェックに追われることになる」(三村社長)。Concur Expenseはこうした規定違反を「水際で防ぐ」(同)。事前にルールを設定しておき、ルールに反する入力があった場合はメッセージを表示する。「30日以内ならコメントを付ける、60日以内なら多段階承認が必要とする、90日以上経ったものは入力不可とする」といった具合に、ルールを多段階で設定できる。

 経費データに特化した150種類のレポート作成機能も特徴の一つ。「グローバル、地域ごと、個人ごとの実績に加えて、『誰がタクシー代を最も使ったか』『接待費を最も使ったか』なども可視化できる」と三村社長は話す。

 クラウドサービスなので、導入は「1カ月半から2カ月で済む」(三村社長)。グローバル企業での利用を志向しており、「日本本社での設定をグループ会社を含む全世界共通の規定とし、その上に各現地法人が固有の設定を追加するといった使い方が可能」(同)。ERP(統合基幹業務システム)パッケージなどで構築した会計システムとの連携機能も備える。

 Concur Expenseの開発元であるコンカーは、1993年創業。創業者の一人であり、米本社のCEO(最高経営責任者)を務めるスティーブ・シン氏は「全世界で1万5000社が利用しており、日本で事業展開している企業も100社以上ある。クラウドプロバイダーとしては、セールスフォース・ドットコムに次いで世界第2位のポジションにある」と話す。コンカー日本法人は、コンカー本社とサンブリッジが共同で2011年2月に設立した。少数株主として、米セールスフォース会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏も名を連ねている。日本法人の三村社長はSAPジャパンの創業メンバーの一人で、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベタープレイス・ジャパンを経て、2011年10月にコンカー日本法人社長に就任した。