NTT(持ち株会社)とNTTファイナンスが2012年2月2日に発表した通信料金の請求・回収業務に対し、競合する通信事業者が警戒感を示している。これはNTT東日本とNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモの4社の利用料金の請求/回収をNTTファイナンスが一括して行うサービスで、2012年7月から実施予定である。ユーザーが希望すれば対象となる複数事業者の請求を1通にまとめることもできる(関連記事へ)。

 NTTは今回のサービスについて、請求書の一本化でユーザーの利便性が高まることや、料金請求に特化した体制を取ることによる業務品質/効率の向上をアピールする。しかし、競合するある通信事業者の渉外担当者は「NTTグループ一体化に向けて、なし崩し的に既成事実を作ろうとしているようにしか見えない」と危機感を訴える。

 1999年に実施したNTTの再編成は、NTTを複数の事業会社に分割し、お互いが競争することで料金の低廉化やサービスの向上を促進することを目的としていた。今回料金請求/回収という1機能ではあるものの、グループ内で人(グループ各社の料金請求・回収部門から受け入れ)と金(グループ各社から料金債権を譲り受け)を動かして統合することは、こうしたNTT再編成の主旨に反するグループ一体経営そのものだと指摘する。

 こうした共通部門を別会社に切り出してまとめるやり方が認められれば、営業部門、企画部門なども同じように別会社として統合することも可能になる。その結果、持ち株会社のNTTを筆頭に、グループが事実上一体的に機能する状況も作り出せると危惧する。今回のNTTの動きは、「これまで競争セーフガード制度や総務省と公正取引委員会によるガイドライン作成などで積み重ねてきた競争政策を蔑ろにし、なし崩し的にグループ一体化/独占に回帰するもの」と批判した。

 このほかにも今回の発表内容に関連して、個人情報の取り扱いに対して危惧を述べる。NTTファイナンスが利用料金の請求/回収を行うに当たって、利用者の住所や氏名、またサービスの利用状況といった情報は必要不可欠だ。こうした情報を、ユーザーとの契約主体ではないNTTファイナンスがまとめて取り扱うことに課題があるのではないかという指摘だ。

 また今回のスキームでは、NTTファイナンスそのものは電気通信事業者ではないことから、競争政策の枠組みである電気通信事業法の蚊帳の外に置かれることも課題と指摘する。そうした結果競争が阻害されれば、長期的には利用者料金の高止まりやサービス品質の低下といった形で、エンドユーザーにも影響が出る可能性があると懸念を示した。