「NTTドコモで通信障害が起こったが、我々もそれを笑える状況ではない。業界共通の悩みであり、課題だと思っている」。ソフトバンクは2012年2月2日、2011年度第3四半期決算を発表(「KDDIは超えた。5年後には営業利益1兆円に」、ソフトバンクの2011年3Qは2桁増益)。その席上、孫正義社長はスマートフォンの普及でデータ通信量が急増していることへの懸念を表明した。

 ソフトバンクモバイルのデータ通信量は、東名阪といった都市部では年3.4倍のペースで増えているという。「2年で10倍、4年で100倍という計算になる」(孫社長)。現在の伸びを放置したままでは、データ通信をさばききれなくなる可能性があるとした。

 「通信量は増えるが、携帯電話に割り当てられる電波の幅は今後8年間で1.5倍増くらいだろう。根本的な解決を考えざるを得ない」(孫社長)。解決策の一つとして電波分配の見直しを挙げた。「タクシー無線やITS(高度道路交通システム)やマラソンの放送中継などの電波は本当に有効利用されているのか。仮に周波数オークションを実施するなら、テレビ局も含めてすべての電波を俎上に乗せて有効利用できているかどうか見直すべきだ」(孫社長)と主張した。

 このほか料金体型について「『事業者がスマートフォンを勝手に売ったのだから、データ定額を続けるのは義務』とのお叱りを受けそうだが、ネットワークを倒さないようにするのが我々の使命。料金体系も世界中で見直しが進んでいる」と、データ定額制見直しの可能性を示唆した。

 スマートフォンのアプリケーションについても「アプリ提供者やOS提供者も一緒に問題解決に取り組んでもらわないといけない。電波は有限なので、技術的にデータ通信が入りきらない事態になりかねない。無線通信でのアプリ開発の作法を認識してもらわないと、皆が困る時代になる」と主張。携帯電話網への負担を減らすため、アプリ開発者への協力を呼びかけるとしたNTTドコモに同調した格好だ([詳報]「VoIPの制限しない」「値上げの想定ない」---NTTドコモ障害対策会見の一問一答)。

 技術的な正攻法として、次世代通信方式への移行や無線LANによる通信のオフロード(退避)も進める意向。通信のオフロードについては「光の道を思い出して欲しい。光ファイバに通信をオフロードするため、規制の問題も含めて考えないといけない」とした。